注目の論文

【大気科学】沿道大気汚染の主たる原因は大量の汚染物質を排出するスクーター

Nature Communications

2014年5月14日

Atmospheric science: Super-polluting scooters dominate road-side emissions

2ストロークスクーターの排気ガスが、主要都市における各種車両による大気汚染の主な原因となっている可能性が明らかになった。2ストロークスクーターに対する規制の強化は、中国の一部の都市で既に実施されているが、世界の多くの都市でも、規制強化によって大気環境の改善を実現できるかもしれないことが、今回の研究で示されている。その詳細を報告する論文が掲載される。

世界の大都市の多くに垂れ込める有害なスモッグ雲の原因は、車両の排気ガス、つまり、自動車とトラック、オートバイの排気ガスに含まれる揮発性有機化合物(VOC)の混合物だ。乗用車とトラックに対する規則はかなり厳しいが、2ストロークスクーターに対する規則は意外なほど緩い。しかし、ヨーロッパでは、2020年までに、スクーターのVOC排出量が、その他の全車両からの排出量を超えるという予測があるため、こうした緩やかな規制は、大きな懸念材料となっている。

今回、Andre Prevotたちは、ヨーロッパの2ストロークスクーターの排気物質を化学的に解析して、アイドリング状態の2ストロークスクーターのVOC排出量が他の車両より平均124倍多く、その多くの2ストロークスクーターが「高汚染」区分に分類されることを明らかにした。Prevotたちは、2ストロークスクーターが車両全体に占める割合は比較的小さいが、その台数の多いバンコクのような都市では、沿道における一次有機エアロゾル量の60~90%の原因となっている可能性があると考えている。

中国は、2ストロークスクーターの有害な影響を既に認識しており、いくつかの主要都市では、早くも1990年代後半から禁止が始まり、交通関連の芳香族化合物排出量が著しく減った。今回の研究結果は、その他の国々もこれと類似した規制によって恩恵が得られる可能性を示唆している。

doi: 10.1038/ncomms4749

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