【海洋科学】イラク沿岸域に生息する頑強なサンゴ礁
Scientific Reports
2014年3月6日
Marine science: Iraq’s coastal waters harbour hardy coral reef
イラク沿岸の濁った海域で、4 km×7 kmのサイズの生きているサンゴ礁が見つかったとの報告が掲載される。これはイラクで初めて発見されたサンゴ礁である。
サンゴ礁は環境に敏感な海洋生態系だと考えられており、きれいな海水、ほぼ一定の水温、適度な塩分濃度、強い波浪を伴う海域で発達する傾向がある。ペルシャ湾(別名アラビア湾)に存在することが知られているサンゴ礁複合体は、水温が14~34℃で、場合によっては潮位が非常に低くなり、塩分濃度が高いという、地球上のサンゴ生息域の中でも極限の環境の1つに適応している。ペルシャ湾に接する多くの国の沿岸域では、サンゴ礁生態系がすでに見つかっていたが、イラクでは見つかっていなかった。イラクの海岸線は58 kmしかなく、また、沿岸海域は濁っているため、衛星からの観測ではサンゴ礁の存在が確かめられずにいた。
Hermann Ehrlichたちは今回、科学的な潜水調査を行い、イラク沿岸海域にサンゴ礁が1つあることを報告した。この調査で、生きているイシサンゴ類や八放サンゴ類(イシサンゴのような石灰質の骨格は持たない)がいくつか見つかり、さらに、サンゴ礁内で生息空間をめぐってサンゴと競争しているか、もしくはサンゴ構造を侵食すると思われる海綿動物や海生軟体動物も見つかった。同定されたサンゴ分類群のうち4つは、成長速度の遅い塊状の種で、この厳しい環境条件下で生育できるほど頑強である。
この濁った海水に耐えて存続する珍しいサンゴ礁群集の発見は、サンゴ礁生態系と気候の研究に取り組んでいる世界の研究者の関心を呼ぶと思われる。著者たちは論文の最後で、これらの生息海域、中でも石油・ガス探査が行われている海域では、早急に保護・保全や研究に取り掛かる必要があると述べている。
doi: 10.1038/srep04250
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