注目の論文

人間の幸福に伴う炭素集約度

Nature Climate Change

2014年2月24日

The carbon intensity of human well-being

世界で高い成長を誇る国と地域では、1970年以降、出生時平均余命が伸び続けているが、それが環境に著しい負担をかけていることが明らかになった。この結果を報告する論文が、今週、掲載される。

経済発展によって生活の質が高まることは、これまでの研究で確認されている。しかし、各国が主に化石燃料に依存しているため、生活の状態が向上すると、炭素排出量が増加する。経済発展と炭素排出の関連を調べた研究は数多いが、経済発展、人間の幸福と炭素排出の動的関係を世界各地で経時的に調べた研究は非常に少ない。

今回、Andrew Jorgensonは、世界106か国における1970~2009年の人間の幸福の炭素集約度(CIWB)、つまり、1人当たりの人為起源の二酸化炭素排出量(この研究では、化石燃料の燃焼量とセメント生産量から算出された)と出生時平均余命の比率を算定した。この研究では、地域的サンプルに含まれる国々をグループ分けし、各グループにおける経済発展(1人当たり国内総生産で表される)のCIWBに対する影響の経時的変化の推定が行われた。研究対象期間の初期には、アフリカ諸国で経済発展が進むとCIWBが低下するという関係が見られたが、最近の数十年間は、この関係の持続可能性が低下した。アジアと中南米の諸国では、経済発展によってCIWBが上昇し、その傾向は、研究対象期間を通じて、だんだんと顕著になった。北米、ヨーロッパとオセアニアの諸国でも、経済発展によってCIWBが上昇し、その影響は他の地域より大きく、経時的に安定していた。社会が化石燃料に依存し続けるかぎり、生活の状態が向上すれば、全世界で炭素排出量が増加するとJorgensonは結論づけている。

doi: 10.1038/nclimate2110

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