将来の温暖化で洪水が激化する見通し
Nature Climate Change
2013年6月10日
A damp prospect under future warming
将来的な温暖化に対する応答として、アジア、アフリカと南米の地域で洪水の頻度が大きく増加するという予測が公表された。一方、このほかの特定の地域では、洪水の頻度が減少するという予測になっている。この論文では、洪水の激化に対する適応対策とさらなる温室効果ガス排出量削減戦略の導入が必要なことが示唆されている。
洪水の予測に関する最近のIPCCの特別報告書には、「限定的な証拠しかない」ために「河川洪水の変化予測の信頼性が低い」と記載されている。確かに、これまでのところ、複数のモデルを用いて予測を行った研究は少なく、将来の温暖化による洪水のリスクを見積もった研究は行われていない。
今回、平林由希子(ひらばやし・ゆきこ)たちは、11の気候モデルから得られたデータを用いて、21世紀末の洪水リスクの全球的予測を公表した。今回の研究では、洪水の変化予測を調べて、その一貫性と広がりを評価した。平林たちは、東南アジア、インド半島、アフリカ東部とアンデス山脈北部において洪水の頻度が増加すると予測し、これとは対照的に、北欧、東欧、アナトリア、中央アジア、北米中部、南米南部の多くの地域で洪水の頻度が減少するという見方を示した。 こうした全球規模の分析に加えて、特定の河川流域の河口で、上述のモデルの分析が行われた。これらのモデルは、21世紀において、南アジア、東南アジア、オセアニア、アフリカ、北東ユーラシアの特定の河川のほぼすべてで洪水の頻度が増加することを示唆している。また、平林たちは、こうした河川の多くで、20世紀には100年に1回の頻度で起こっていた洪水事象が、21世紀には約10~50年に1回の頻度で起こると予測している。
全球的な洪水の発生件数は温暖化の程度に応じて増加すると考えられるが、洪水の発生件数に経年変動性があるため、顕著な温暖化が起こる前に適応対策を実施する必要性が生じている可能性があると平林たちは警告している。さらに、平林たちは、洪水の頻度と人口の両方が増加すると予測されている低緯度域での適応対策と予防対策に大きく注目しなければならないことも強調している。
doi: 10.1038/nclimate1911
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