気候変動の影響回避の評価
Nature Climate Change
2013年1月14日
Assessing the avoidance of climate change impacts
排出削減政策によって回避可能な気候変動の影響に関する全球規模の多分野地域別評価が実施され、その結果を報告した論文が、今週、Nature Climate Changeに掲載される。
提案された緩和策が全球平均気温に及ぼす影響について調べる研究は、これまでに数多く行われてきたが、気候変動対策によって回避可能な気候変動の影響を全球スケールや地域スケールで評価する研究は少なかった。それに、そのような研究が実際に行われた場合でも検討対象となった気候モデルやシナリオの数は少なかったため、提案されたさまざまな排出削減政策や目標値が気候変動の影響に及ぼす効果に関する政策上重要な証拠を得ることは難しかった。今回、N Arnellたちは、いろいろな気候変動緩和策によって回避される気候変動の地域的影響と全球的影響をさまざまな分野にわたって評価した。そして、2030年以降に排出量を年5%のペースで削減させる政策と2016年以降に年2%のペースで削減する政策は、2100年時点の気温がほぼ同じだが、気候変動影響に対する効果は、後者より前者の方が小さいことを報告している。この結果は、2100年に回避できる気候変動の影響に対しては、排出量の削減率よりも排出量がピークを迎える時期とピーク値の影響の方が大きく、ピークの時期が早く、ピーク値が低い方が、気候変動の影響をもっと大きく避けられることを示唆している。
また、Arnellたちは、回避される気候変動の影響は、分野間でかなりのばらつきがみられることも報告している。例えば、2016年にピークに達した後は、年5%で削減される排出経路であれば、気候変動が沿岸洪水のリスクに及ぼす悪影響の58~66%を避けることができるが、作物適性に対する悪影響については、わずか30~40%しか回避できないことが明らかになった。 Arnellたちは、気候変動対策によって回避できる気候変動の影響は、2030年までは無視できるほど小さく、全球規模では、2050年まで小さい状態が続くが、2100年には明確になると結論づけている。今回の研究で得られた新知見は、排出削減政策があれば、それがない場合に2050年に生じる影響を数十年間遅らせることが可能なことを示している。
doi: 10.1038/nclimate1793
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