進化:RNAワールドの時期を絞り込む
Nature Communications
2026年9月23日
Evolution: Narrowing the timeline for the RNA World
生命の初期段階として提案されている「RNAワールド(RNA World)」を維持し得た条件は、約43億3000万年前に安定化した可能性があることを報告するモデル化研究の論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この研究は、地球の地表や浅い地殻の一部が、生命の材料となる分子が存続できるほど十分に冷却された時期を時系列で示しており、地球初期の生物史に関する理解に新たな知見をもたらすと考えられる。
DNAが生命の中心となる以前、RNA分子が遺伝情報を保存し、自ら複製していた可能性があると考えられており、この時期は「RNAワールド」と呼ばれている。しかし、形成初期の地球は、小惑星や惑星形成の残骸による衝突で繰り返し加熱されていた。そのため、生命誕生前の化学が長期間続くには適さない環境が生じていた可能性がある。これまで、「RNAワールド」が成立・発展し得る時期を特定しようとする試みは、決定的な結論にいたっていなかった。
Oleg Abramovら(惑星科学研究所〔米国〕)は、3次元コンピューターモデルを用いて、45億年から35億年前の間に地球の地殻に衝突がもたらした熱の影響をシミュレーションした。このモデルでは、上部地殻の温度に加え、RNA、ペプチド、脂質、およびヌクレオチドといった生命に関連する分子の熱に対する安定性の限界を追跡した。シミュレーションの結果、地球規模で頻繁に起きた滅菌的事象(高温の岩石片、溶融物質、および塵が地表に再堆積することなど)が、およそ44億年前まで続いたことが示唆された。これらの推定値は、この時期以前に、生命誕生前の化学反応が持続的に起こっていたとは考えにくいことを示している。一方で、モデルによると、この時点以降、環境条件はより穏やかになり、エネルギーに富む熱水環境がより広く分布するようになったことが示唆されている。著者らは、約43億3000万年前を、持続的なRNA関連の化学反応を支える条件が最もそろっていた「スイートスポット(sweet spot)」として特定している。これは、最終普遍共通祖先の出現が推定される時期より、およそ1億3000万年早い時期にあたる。このことは、環境条件が好転した後、生命が比較的短期間で出現したとする見方と整合する。
著者らは、このモデルが地球上の熱的条件のみを評価するものであり、生命がいつ出現したかを直接明らかにするものではないと注意を促している。ただし、提案された期間は、評価されたさまざまな天体衝突シナリオをつうじておおむね同様であった。
- Article
- Open access
- Published: 22 September 2026
Abramov, O., Medvegy, A., Kremer, B. et al. A Hadean timeline for the emergence of the RNA World. Nat Commun 17, 9790 (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-76978-3
doi: 10.1038/s41467-026-76978-3
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