環境:気候変動がヨーロッパの高木を脅かす
Nature Ecology & Evolution
2024年4月30日
Environment: Climate change threatens European trees
森林喪失への対処に適した樹種の数が、気候変動によって今世紀末までに3分の2に減少する可能性があることを示唆する論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。今回の知見から、一部の高木は穏やかな気候変動シナリオでも危機にさらされる可能性があることが示された。
ヨーロッパの高木の枯死が過去30年間に急増し、行政当局はどうすれば森林生態系を維持できるか検討することを迫られている。高木は寿命が長いため、今日植え付けられた高木は、現在の条件と今世紀末までに予測される気候の両方に耐えられることが必要になる。
今回、Johannes Wesselyらは、ヨーロッパ各地原産の高木69種の分布を評価した。対象となったのはセイヨウトネリコ、オーク、ヤナギ、ナナカマドなどの種で、自生するものと植林されたものの両方が含まれた。そしてWesselyらは、3つの気候シナリオ(代表的濃度経路〔RCP〕2.6、4.5、8.4)の下でそれらが今世紀末まで生き延びられるかどうかをモデル化した。また、木材の供給、炭素の貯蔵、生息地の提供に関して、現在の気候シナリオと予測される気候シナリオにおけるそれらの樹種の潜在能力を評価した。その結果、今世紀末まで生き延びることができる樹種の数は、検討した中で最も穏やかなシナリオでは1平方キロメートル当たり平均約33%、最も厳しいシナリオでは平均約49%減少する可能性があることが明らかになった。また、中間の気候シナリオ(RCP 4.5)において、木材供給、生息地提供、炭素貯蔵の潜在能力を有する樹種で適性を維持するものは、1平方キロメートル当たり平均でわずか3種にとどまり、これは森林管理と社会にとって重要な意味を持つ可能性がある。
以上の結果から、変化する気候は2100年まで生き残るのに適した樹種の数に影響を与える可能性があり、森林回復や植林への適性を評価するに当たっては樹木の寿命全体を考慮しなければならないことが示唆された。
doi: 10.1038/s41559-024-02406-8
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