惑星科学:ディモルフォスはDARTによる衝突後に大きく変形した可能性がある
Nature Astronomy
2024年2月27日
Planetary science: Dimorphos may have been reshaped following DART impact
小惑星ディディモスの衛星ディモルフォスは、NASAの二重小惑星進路変更実験(DART)による衝突後に大きく変形した可能性があることを報告する論文が、Nature Astronomyに掲載される。この結果は、ディモルフォスがディディモスから放出された物質で構成された、もろい破砕集積体(ラブルパイル)である可能性を示している。
DART惑星防衛実証機は2022年9月26日、地球近傍小惑星ディディモスの衛星であるディモルフォスに衝突し、ディモルフォスがディディモスを周回する軌道周期を33分短縮させて、そのミッションを達成した。DARTは惑星防衛に重要な有用性を持つが、探査機もまた、小惑星の内部構造や、衝突がその特性に及ぼす影響に関する情報をもたらした。
今回、Sabina Raducanらは、DARTの最初の結果によってもたらされたディモルフォスの力学的特性と組成的特性に関する現実的な制約を用いて、最新の衝突物理学のコードでDART衝突をモデル化した。衝突の観測結果に最もよく一致したシミュレーションからは、ディモルフォスがもろく、小惑星ベンヌやリュウグウと同様な凝集力を持ち、その表面には巨礫がないことが示唆された。Raducanらは、ディモルフォスが自転質量流出とディディモスから放出された物質の再集積によって形成されたラブルパイルである可能性を示唆している。またこのモデルは、DART衝突が、衝突クレーターを形成したのではなく、ディモルフォスの形状を全体的に変形させ(大規模変形として知られる)、その内部からの物質でディモルフォスの表面更新現象を引き起こした可能性を示している。
Raducanらは、今回の知見が連星小惑星の形成と特徴に関するさらなる手掛かりをもたらし、欧州宇宙機関(ESA)の次期ヘラ・ミッションなど、将来の探査や小惑星の軌道変化の取り組みに影響を与える可能性があると結論付けている。
doi: 10.1038/s41550-024-02200-3
注目の論文
-
10月1日
考古学:岩絵は古代アラビア砂漠で繁栄する人類を描いているNature Communications
-
9月26日
生態学:世界大戦時の沈没残骸が野生生物の生息地となっているCommunications Earth & Environment
-
9月25日
生態学:米国河川における魚類の生物多様性の変化Nature
-
9月25日
地質学:サントリーニ島で最近発生した地震は共通のマグマによって説明できるかもしれないNature
-
9月24日
古生物学:新種の肉食恐竜が白亜紀後期のアルゼンチンを支配していたNature Communications
-
9月24日
気候変動:2100年までに世界的に深刻な水不足が発生するかもしれないNature Communications