気候科学:近年観測されている南極オゾンホールの異変の原因
Scientific Reports
2011年7月15日
Climate science: Explaining Antarctic ozone hole anomalies
南極のオゾンホール、すなわち南極上空の成層圏のオゾン層の破壊に関しては、近年になって、大幅な減少が観測される年があり、2010年もそうだった。この点について、南極の冬に起こる成層圏突然昇温(SSW)という急激な気象現象が原因だとする考え方が示された。詳細を報告する論文が、 Scientific Reportsに掲載される。南極のオゾンホールが毎年発生するのは、フロン類(CFC)の人為的排出によって大気中の塩素濃度が徐々に増加していることと関連している。フロン排出量の削減をめざした国際的な取り組みによって、フロンは徐々に減ってきているが、1979年以降、1986、1988、2002、2004、2010の各年で、主に高度約20〜25 km(成層圏中層)でオゾン層の破壊が予想外に減っていることが観測された。ただし、その理由は明らかになっていない。今回、J de LaatとM van Weeleは、衛星観測結果とマイクロ波リムサウンダー(MLS)による観測結果をもとに、2010年の高度20〜25 kmにおけるオゾン層破壊の減少が、真冬の南極で起こった小規模なSSWに関連しているという考え方を示している。SSWでは、成層圏の温度(ケルビン)が数度しか上昇しないが、成層圏中層の高湿度の空気が(高度18 kmまで)下降し、大気の化学組成を変化させる。1979年以降で、同じようにオゾン層の破壊量が少なかった年にも小規模なSSWか大規模なSSWが起こっており、南極成層圏でのオゾン層破壊にとってSSWが重要な意味を持っていることがさらに明確になっている。
doi: 10.1038/srep00038
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