気候:衛星の観測データから明らかになったグリーンランド氷床が縮小する過程
Nature
2024年1月18日
Climate: Satellite observations reveal how the Greenland Ice Sheet has shrunk
世界で2番目に大きいグリーンランド氷床が1985年以降に約5091平方キロメートルの氷を失ったことを報告する論文が、Natureに掲載される。こうして失われた氷量が海水準の上昇に与える影響は比較的小さかったが、氷量の減少は、海洋循環、ひいては地球上の熱エネルギー分布に影響を及ぼした可能性がある。
世界中の氷床は過去数十年にわたって後退しており、特にグリーンランド氷床は1990年代以降、氷質量の減少が加速している。このグリーンランドの氷量減少は今後も続くことが、気候モデルによって高い確度で予測されているが、過去の氷床の後退過程を研究することで、今後の挙動を垣間見ることができるかもしれない。
今回、Chad Greeneらは衛星画像を用いて、1985~2022年の氷河の末端位置(23万6328カ所)を確定し、それを基に、カービング(氷河の末端部から氷塊が崩落する過程)の範囲、および氷床の末端部の変化とその結果として減少した氷の総面積を定量化した。その結果、グリーンランド氷床は、過去40年間に約5091平方キロメートルの氷を失ったことが判明した。この面積は、約1034ギガトン(1034兆キログラム)の氷に相当する。もっと詳しく言うと、グリーンランド氷床は2000年1月以降、毎年平均218平方キロメートルずつ縮小したことが今回の分析で明らかになった。Greeneらは、この氷床の後退が海水準の上昇に大きく寄与したとは考えられないが、海洋循環パターンと地球全体の熱エネルギー分布に関係している可能性があると指摘している。
今回の研究では、グリーンランド氷床の氷河の一部(ヤコブスハン・イスブラエ氷河、ザカリエ・イストローム氷河など)において、1年の間の冬の成長と夏の後退の振れ幅が最も大きく、これらの氷河では、1985~2022年の後退が最も大きかったことも明らかになった。このことは、氷河の季節変動が氷河の長期的後退の予測変数となり得ることを示している。
doi: 10.1038/s41586-023-06863-2
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