気候:グリーンランド氷床の安定性の将来予測
Nature
2023年10月19日
Climate: Assessing the future stability of the Greenland ice sheet
地球温暖化によって全球平均気温が産業革命前の気温を約2℃上回ると、グリーンランド氷床は融解によって急速に消失するという予測を示したモデル化研究について報告する論文が、Natureに掲載される。その後、全球平均気温が低下して、産業革命前の気温の1.5℃以上に達しないレベルになれば、氷床の消失が軽減される可能性があるが、この気温の低下は数世紀以内に起こる必要があるという。
グリーンランド氷床は、2002年以降、気温上昇による融解の結果として観測された海水準の上昇に20%以上寄与したと推定されている。しかし、この氷床が将来の気温上昇にどのように応答するかについては確かなことが分かっていない。例えば、モデル化研究と古気候の証拠からは、グリーンランド氷床が、温暖化シナリオや寒冷化シナリオの下で、複数の異なる配置で安定化する可能性が示唆されている。
今回、Nils Bochowらは、複数の温暖化の将来シナリオの下でグリーンランド氷床の挙動をモデル化した。これらのシナリオは、全球平均気温が上昇して、安定している氷床の臨界閾値を超え、その後低下するというものだった。Bochowらは、氷床の安定性が、気温が閾値を超えている期間の長さと気温が閾値を上回った程度の両方に影響されるという考えを示している。そして、全球平均気温の閾値が産業革命前の気温を1.7~2.3℃上回るレベルである場合に、急速な氷床の消失が起こりやすいことを明らかにした。分析結果によれば、全球平均気温が数世紀以内に産業革命前の気温の1.5℃以上に達しないレベルに下がれば、たとえ産業革命前の気温を6℃以上も上回る最大級の温暖化があっても、氷床の消失は軽減される可能性がある。ただし、時期が極めて重要であり、閾値を「オーバーシュート(超過)」してから数世紀以内に低い気温に戻らなければ、グリーンランド氷床が海水準の上昇に数メートル寄与する可能性が高いままになる。
doi: 10.1038/s41586-023-06503-9
注目の論文
-
1月13日
生態学:霊長類における同性行動に関連する社会的および環境的要因Nature Ecology & Evolution
-
1月9日
環境:ライン川には年間最大4,700トンのごみが流れているCommunications Sustainability
-
1月8日
古生物学:モロッコのホミニンの化石が現代人の出現を解明するNature
-
1月7日
惑星科学:エウロパにおける地殻変動は起こりそうにないNature Communications
-
1月6日
気候変動:グリーンランドのプルードー・ドームは完新世の温暖期に溶けたNature Geoscience
-
12月17日
遺伝学:古代アンデス人は失われたラクダ科動物の系統を狩猟し、飼育していたNature Communications
