気候:気候変動に対応するための高地への生息域移動が進まない飛翔昆虫
Nature Climate Change
2023年9月12日
Climate: Upslope climate-driven migration may be harder for flying insects
飛翔に依存する昆虫は、良好な気候条件を求めて高高度方向へ移動しようとすると、他の昆虫より大きな困難に直面する可能性があることを示した論文が、Nature Climate Changeに掲載される。今回の研究は、移動する能力が高いと思われている昆虫種であっても、移動能力を制限し得る生理的障壁が存在していることを浮き彫りにしている。
一部の生物種は、気候変動によって絶滅することを避けるため、緯度や標高の高い、より寒冷な気候へと生息域を移しつつある。しかし、これまでの研究から、飛翔能力を持つなどの理由から移動分散能力が高いと考えられている生物種を含めて、多くの生物種は移動のペースが遅く、気候変動に対応しきれていないことが示されている。
今回、Michael Mooreらは、ミツバチ、ガ、コガネムシなどの科に属する807種の昆虫のデータを総合して、これらの昆虫の移動運動戦略と生息域の高度変化を分析した。その結果、飛翔だけに依存する昆虫と他の方法による移動運動もできる昆虫の間で、高高度方向への移動速度に有意な差が認められた。生息域の中でも標高の高い地域(生息域の最前線)では、飛翔に依存する昆虫種の移動のペースが飛翔に依存しない昆虫種よりも遅く、標高の低い地域では、飛翔に依存する昆虫種の移動のペースの方が速かった。Mooreらは、飛翔の代謝要求が高く、特に大気密度の低い高地で顕著なため、これが一部の昆虫種の移動に対する障壁になっているという仮説を立てており、今回の知見はその裏付けとなった。
Mooreらは、気候に起因する将来の変化を予測する際には、単に気温の観測値を検討するだけでなく、生物種の生理的要求や生態学的要求を幅広く検討する必要があると提言している。
doi: 10.1038/s41558-023-01794-2
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