気候:2002年以降に世界中で極端な水文気候事象が増えたことを示す衛星観測結果
Nature Water
2023年3月14日
Climate: Satellite observations show worldwide water extremes increasing since 2002
極端な水循環現象の全球的強度という指標は、干ばつや洪水の範囲(広がり)、継続期間、深刻度を総合した指標だが、これが2002~2021年の期間中に上昇したことを報告する論文が、Nature Waterに掲載される。この全球的強度は、他の気候指標よりも世界全体の平均気温と高く相関しており、地球温暖化が続くと、干ばつと洪水の発生頻度、範囲(広がり)と深刻度が増すかもしれないことが示唆されている。
気候変動に伴って干ばつや洪水の発生頻度と深刻度が増すという予測がなされてきたが、そのことを測定し、定量化することは困難だった。これまでの研究では、降雨データが主な研究対象となっていた。
今回、Matthew RodellとBailing Liは、NASA/German Gravity Recovery and Climate Experiment(GRACE)衛星とGRACE Follow-On(GRACE-FO)衛星の観測データを利用した新しいアプローチを適用し、2002~2021年の期間中に世界中で発生した極端な降雨事象と乾燥事象を特定し、定量化した。その結果、2015年から2021年までの7年間に激しい干ばつと極端な降雨事象の発生頻度が高くなったことが判明した。最も極端な事象の発生頻度は年4回で、それ以前の13年間の発生頻度(年3回)より高くなった。また、2015~2021年は、研究対象期間中で世界全体の気温が最も高かった。また、月ごとの乾燥事象と降雨事象の強度は、世界全体の平均気温とよく相関していた。過去20年で最も強い極端事象は、2019年に始まり現在も続いている中央アフリカ全土にわたる降雨事象で、記録上最も激しい干ばつの中には、最近始まったアメリカ南西部、ヨーロッパ南部、ブラジル南部の3地域での干ばつが含まれている。
著者たちは、過去の極端な気象事象と現在進行中の極端な気象事象を理解し、将来の極端な気象事象を予測することが、極端な水文事象への備えを確かなものとし、影響を緩和するために役立つと結論付けている。
doi: 10.1038/s44221-023-00040-5
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