気候:エルニーニョ現象の増強による南極の大陸棚海域の水温上昇
Nature Climate Change
2023年2月21日
Climate: Stronger El Niño would warm Antarctic shelf ocean
繰り返し起こる気候パターンであるエルニーニョの振幅が増大することが予測されているが、そうなった場合に南極の大陸棚海域の水温が上昇し、静止している棚氷や氷床の融解を加速させる一方、浮遊する海氷の減少を遅らせる可能性のあることが明らかになった。この結果を報告する論文が、Nature Climate Changeに掲載される。
エルニーニョ南方振動(ENSO)は、熱帯太平洋で発生し、その高温相(エルニーニョ)と低温相(ラニーニャ)の両方が、全球気候の自然変動の重要な駆動要因となり、遠隔地までを含む各地域の気象条件に影響を与えている。人為起源の気候変動は、ENSOの規模を増大させ、エルニーニョ現象とラニーニャ現象の両方を増強すると予想されている。このようにENSOの変動性が増大すると、南極海の中緯度域の水温上昇が鈍化する可能性があるが、もっと南極に近い海域の水温上昇にどのような影響を与えるかは明らかになっていない。
今回、Wenju Caiたちは、ENSOの変動性の増大が南極の大陸棚海域付近の温暖化に及ぼす影響に焦点を当てて、数々の気候モデルを検討し、ENSOの変動性の増大によって表層付近の水温の上昇が鈍化するが、それより深層の海水温の上昇が加速することを明らかにした。ENSOの変動性の増大を示した気候モデルは、水温が上昇した深層水の湧昇が減少し、表層水の水温上昇が鈍化することを明らかにした。これらのモデルは、浮遊する海氷の融解が鈍化することを示しているが、より深層の海水の水温上昇が加速して、棚氷や氷床と相互作用することがあり、これらの氷塊の融解が増加するかもしれないことも示している。
これらの気候モデルには詳細な氷床モデルが含まれていないため、ENSOの変動性の増大が全体的な氷の消失に及ぼす影響の大きさは明らかになっていない。
doi: 10.1038/s41558-023-01610-x
注目の論文
-
7月18日
疫学:欧州における鳥インフルエンザ発生の主な予測因子が特定されるScientific Reports
-
7月17日
惑星科学:惑星系の誕生の瞬間をとらえるNature
-
7月17日
古生物学:獲物に忍び寄るための古代爬虫類の特殊なヒレNature
-
7月10日
環境:大西洋全域で高濃度のナノプラスチック粒子が検出されるNature
-
7月10日
気候変動:クジラの糞が温暖化に関連する有毒藻類ブルームの大発生を記録するNature
-
7月10日
ゲノミクス:タンパク質は古代のエナメル質に保存されているNature