注目の論文

輸送:オランダ人のように自転車を利用して二酸化炭素排出量を減らそう

Communications Earth & Environment

2022年8月19日

Transport: Going Dutch cuts carbon emissions

世界の1人ひとりが、オランダでの自転車利用パターンのように自転車を1日2.6 km利用すれば、二酸化炭素排出量を年間6億8600万トン削減できるかもしれない。この研究知見は、1962~2015年の世界の自転車の生産量、所有台数、利用状況に関する国別評価に基づいている。今回の研究について報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。

世界の燃料関連の温室効果ガス排出量の4分の1は、運輸部門が占めており、その半分は乗用車や小型トラックなどの自家用車によるものだ。自転車を利用すると、温室効果ガス排出量を削減できることが知られているが、ほとんどの国で、運輸部門における自転車の役割は小さい。これまでの世界における自転車の生産量、貿易量、在庫量、利用状況のパターンは、十分に解析されておらず、持続可能な道路輸送における自転車の役割を徹底的に調べることができなかった。

今回、Gang Liuたちは、1962~2015年の国別の自転車の所有と利用に関する全球データセットをまとめた。Liuたちは、この期間中に世界の自転車生産量の伸びが自動車生産量を上回っていたという見解を示している。2015年の世界の自転車生産量の65.7%を中国が占め、ブラジル5%、インド4%、イタリア2%、ドイツ2%の順だった。また、自転車の所有台数が多いからといって、必ずしも自転車の利用率が高くなるわけではなく、世界のほとんどの国では、国民の1日の移動に自転車利用が占める割合が5%未満であることも判明した。Liuたちは、デンマークと同じような自転車の利用パターンを採用して、自転車を1日1.6 km利用すれば、年間二酸化炭素排出量を4億1400万トン減らせるかもしれないという見解を示している。この削減量は、英国の2015年の二酸化炭素排出量の総量に匹敵する。もしオランダの自転車利用パターンに従えば、1年間の削減量が6億8600万トンに増えるかもしれない。

Liuたちは、持続可能な自転車利用を促進することが急務になっており、税制を通じた自動車利用抑制政策、自転車を推進するための教育と文化、効果的な自転車レーンの計画と建設などを通じて、世界規模で政策、計画、インフラ開発を支援することで達成できるという考えを示し、デンマークとオランダの場合のような自転車推進政策とインフラ開発を世界中で推進すれば、気候面でこれまでにない大きな利益を得られるかもしれないと結論付けている。

doi: 10.1038/s43247-022-00497-4

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度