注目の論文

持続可能性:自動車の廃プラスチックをグラフェンに変換する

Communications Engineering

2022年5月27日

Sustainability: Converting vehicle waste plastics into graphene

エネルギー効率の高い過程を用いて、自動車の廃プラスチックがグラフェンに変換(アップサイクリング)できたことを報告する論文が、Communications Engineering に掲載される。グラフェンは、新車用の部品に使用できる。この知見は、全世界で使用されている14億台以上の乗用車に由来する廃材が埋め立て処分されるという問題に対する解決法となり得る。

埋め立て処分される廃プラスチックのうち、合計1兆キログラム以上が使用済み自動車に由来するプラスチックである。1台の自動車に200~350キログラムのプラスチックが含まれているが、自動車由来の廃プラスチックは、数々の理由からリサイクルが困難だった。例えば、これらの材料の多くが改変プラスチックで、リサイクルが容易でない。また、従来のリサイクル方法では、プラスチックのタイプによって分別する必要があるためにコストがかかる。しかし、最近の研究で、廃プラスチックをグラフェンに変換できることが明らかになった。グラフェンは、優れた導電性、高い熱安定性と化学的安定性などの有用な特性を持つ高価(1トン当たり6万~20万ドル、約750~2500万円)な材料である。この変換過程は、自動車の廃プラスチックをグラフェンにリサイクルする実行可能な手段となるかもしれない。グラフェンは、強度と騒音吸収性を向上させるための添加剤として、一部の自動車用プラスチックに用いられることがある。

今回、James Tourたちは、使用済み自動車の廃プラスチックを高品質のグラフェンに変換するためのエネルギー効率の高い過程(フラッシュジュール加熱)を実証した。この過程は、放電によって炭素を加熱してグラフェンに変換するというもので、低コストのインフラを使用し、プラスチックの分別、溶媒、加熱炉や水を必要としない。Tourたちは、フォード社製F-150(ピックアップトラック)のバンパー、ガスケット、カーペット、マット、シート、ドアケースを一緒に粉砕し、一般的に適用できる過程であることを実証した。次に、Tourたちは、リサイクルされたグラフェンを使って新車用プラスチックを強化し、フォード社が製造した新しいグラフェンを含むプラスチック複合材と同等の性能を持つことを明らかにした。そして、Tourたちは、この廃プラスチック由来のグラフェン/プラスチック複合材を再びフラッシュジュール加熱して、グラフェンをさらに生成した。フラッシュジュール加熱は、従来のグラフェン製造方法と比べて、エネルギー需要、地球温暖化の可能性、水使用量がいずれも低いことが判明した。

Tourたちは、今回の知見は、もっと環境にやさしいグラフェン製造への一歩になるかもしれないという見解を示している。

doi: 10.1038/s44172-022-00006-7

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