注目の論文

生態学:サンゴ礁の復元に役立つ回復力の強いサンゴがグレートバリアリーフで発見された

Nature Communications

2022年3月30日

Ecology: Finding resilient corals on the Great Barrier Reef for reef restoration

グレートバリアリーフの数百のサンゴ礁には、熱耐性のある子孫を生み出すサンゴが含まれている可能性があることを示唆した論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、気候変動の影響に抵抗する能力を持つサンゴ礁の特定に役立つ可能性があり、損傷したサンゴ礁の回復に使用できるかもしれない。

サンゴは、気候温暖化のために、熱耐性の限界まで追い込まれており、サンゴ礁の白化と劣化につながる恐れが生じている。熱耐性の遺伝性を解明して、気候温暖化の影響から回復できるサンゴを特定し、そのサンゴの生息場所を予測することは、世界中で検討されているサンゴ礁回復プログラムにとって重要である。

今回、Kate QuigleyとMadeleine van Oppenは、繁殖実験、リモートセンシング、機械学習を組み込んだモデル化の枠組みを提示し、グレートバリアリーフで高い熱耐性を子孫に伝えることができる繁殖期のサンゴの生息場所を特定した。著者たちは、産卵期のウスエダミドリイシ(Acropora tenuis)を使って実験室で繁殖実験を行い、熱ストレス下でサンゴがどのように生存し、どのように熱耐性を高めることができるかについての知見を得た。次に、著者たちは、衛星により検出された環境データと機械学習モデルを併用して、熱耐性を有する成体サンゴが発生する条件を予測する枠組みを構築し、そのようなサンゴがグレートバリアリーフ内で生息し得る場所を特定した。その結果、サンゴ礁の約7.5%に熱耐性を有するサンゴが生息している可能性があり、緯度は熱耐性の予測因子に適していないことが分かった。著者たちは、むしろ、長期の温暖化を経験し、毎日の水温が極端に高いサンゴ礁が理想的な条件だったという考えを示している。

著者たちは、今回の知見が、世界中のサンゴ礁管理者やサンゴ礁の回復を目的として実施中の保全活動にとって重要な意味を持つという見解を示している。ただし、今回の手法の普遍性を確認するためには、より多くのサンゴ種を対象とした研究を積み重ねる必要がある。

doi: 10.1038/s41467-022-28956-8

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