環境:有害廃棄物のワールドワイドウェブを評価する
Nature Communications
2022年3月30日
Environment: Assessing the world-wide hazardous waste web
全世界の有害廃棄物の動きをマッピングする世界規模の有害廃棄物ネットワークについて報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究は、廃棄物の純輸出国と純輸入国、および廃棄物の滞留リスクが最も高い国を特定する上で役立つ。
全世界で年間70~100億トンの廃棄物が産出されており、そのうちの3~5億トンが有害廃棄物(有毒廃棄物、可燃性廃棄物、爆発性廃棄物、腐食性廃棄物、生物学的リスクのある廃棄物など)である。さまざまな国や地域の間で廃棄物の取引が行われており、過去30年間で有害廃棄物の取引量は500%増加した。廃棄物の取引を行うことには経済的インセンティブがあるが、廃棄物の輸入国は、すでに廃棄物管理と環境衛生問題に取り組み、廃棄物の滞留(廃棄物の量が処理能力を上回る状態)を経験していることが多い。
今回、Ernesto Estradaたちは、2001~2019年(2010年を除く)のデータを用いて、国や地域の間での有害廃棄物108区分の取引を追跡調査し、世界規模の有害廃棄物ネットワークをモデル化する数学的枠組みを構築した。このモデルは、特定の種類の廃棄物に関して、特定の国で収容能力に達し、飽和状態になっている時点を特定する。Estradaたちは、環境や人の健康に影響を及ぼす有害物質の不適切な取り扱いや汚染の恐れにつながる廃棄物の滞留を起こすリスクが高い28か国を特定した。ここには、大量の有害廃棄物を輸入するメキシコ、インド、ウズベキスタンが含まれている。また、Estradaたちは、ドイツ、フランス、米国などの諸国が、かつてはバランスの取れた廃棄物フローを維持していたが今ではもっぱら廃棄物の純輸出国となっており、中国が有害物質の主な純輸出国になったという見解を示している。
Estradaたちは、今回の知見によって、廃棄物の発生と政策変更に関する世界的シナリオ[例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)や廃棄物の輸入禁止など]と、こうしたシナリオがその後の各国の廃棄物の滞留に及ぼす影響を評価できるようになるという考えを示している。
doi: 10.1038/s41467-022-28810-x
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