環境:米国における花粉放出期の長さに対する気候変動の影響の評価
Nature Communications
2022年3月16日
Environment: Assessing the impact of climate change on pollen season length in the US
米国における植物の花粉の放出は、21世紀末になると、気候変動の結果として、今よりも最大40日早く始まるかもしれないというモデル化研究の結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、気候変動と環境汚染が、花粉関連アレルギーの季節を長期化して、ヒトの健康にさらなる悪影響を及ぼす過程を明らかにしている。
風による花粉の生成は、気温や降水量と関係があり、植物の受精に重要な役割を果たしている。花粉症などの花粉誘導性の呼吸器アレルギーは、世界人口の30%が罹患しており、欠勤や医療費支出による経済的損失の一因になっている。こうした健康問題や経済的問題のため、植物の花粉生成量、そして季節性アレルギーが気候変動によってどのように変動するかを解明することは重要だ。
今回、Yingxiao ZhangとAllison Steinerは、気候データと社会経済的シナリオを組み合わせて、21世紀末(2081~2100年)の米国における花粉放出量の変化を予測するためのモデル化法を開発し、過去の期間(1995~2014年)と比較した。その結果、21世紀末には、花粉の放出が最大40日早く始まり、19日長く続く可能性があり、米国全土の年間花粉放出量が16~40%増加することが分かった。さらに、このモデルに二酸化炭素濃度を組み込んだところ、人為起源の環境汚染のために年間花粉放出量が最大250%増加する可能性のあることが判明した。
著者たちは、二酸化炭素濃度が花粉生成量に及ぼす影響についてのデータは、実験室内での研究結果に基づいたものであるため、自然環境における影響を定量化するためにはさらなる研究が必要だと指摘している。また著者たちは、今回の知見は、気候変動が花粉の放出パターンに及ぼす影響とその結果としての健康への影響に関するさらなる研究の出発点だと結論付けている。
doi: 10.1038/s41467-022-28764-0
注目の論文
-
12月11日
気候変動:世界的な観光産業による二酸化炭素排出量は増加し、不平等であるNature Communications
-
12月10日
Nature's 10:2024年の科学に影響を与えた10人Nature
-
12月5日
気候:GenCastは既存の気象予報を凌駕するNature
-
11月28日
古生物学:糞便の科学捜査が恐竜の台頭を記録するNature
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature