環境:COVID-19によるロックダウン期間中の地表の二酸化窒素汚染の格差
Nature
2022年1月20日
Environment: Variation in ground-level nitrogen dioxide pollution during COVID-19 lockdowns
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウン期間中の二酸化窒素(NO2)の地表濃度の低下は、地域とNO2排出部門によって大きく異なっており、国別のNO2の人口加重平均濃度の低減幅は、COVID-19によるロックダウン措置が厳しかった国の方が、ロックダウンのなかった国より約33%大きかったことが明らかになった。この研究結果を報告する論文が、Nature に掲載される。今回の知見は、NO2曝露推定値に関する知識を充実させ、大気質の健康評価を進展させる機会となる。
NO2は、大気汚染に対する重要な寄与因子であり、NO2への曝露は、有害な健康転帰(呼吸器感染症、喘息、肺がんなど)に関連している。COVID-19の流行拡大を抑制するためのロックダウン措置が実施されると、NO2の大気中濃度と地表濃度が低下することがこれまでに報告されている。しかし、人工衛星によるデータを用いて測定されたNO2の大気中濃度と、高所得国でのみ測定されることが多いヒトの健康に関連するNO2の地表濃度との関係については、疑問が残っている。
今回、Matthew Cooperたちは、高解像度の衛星データを用いて、全球的なNO2の地表濃度を算出し、各都市の2020年のCOVID-19によるロックダウン期間中の地表濃度を2019年の地表濃度と比較した。次に、Cooperたちは、人工衛星の測定結果を用いて、200以上の都市でのNO2濃度の変化を定量化した。そのうちの65都市は、ほとんどが低所得地域に位置しており、地表濃度のモニタリングが行われていなかった。Cooperたちは、国別のNO2の人口加重平均濃度の低減幅が、厳しいロックダウン条件を定めた国々(北米や中国など)の方が、そうでない国に比べて、約29%大きいことを明らかにした。COVID-19によるロックダウン期間中のNO2濃度の低減幅は、最近の排出規制による年平均低減幅を上回っており、全球的に約15年間削減が続いた状態に相当することも判明した。
今回の研究結果は、ロックダウンに対するNO2の感受性が、国や排出部門(例えば、発電所や輸送機関)によって異なることを示唆しており、高解像度の衛星データによる地表濃度の推定値に関する情報が必要なことを実証している。
doi: 10.1038/s41586-021-04229-0
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