注目の論文

生物工学:魚粉の代用品としてのメタン由来タンパク質の費用対効果の評価

Nature Sustainability

2021年11月23日

Biotechnology: Cost effectiveness of methane-derived protein as fishmeal assessed

米国では、産業によって排出されたメタンから細菌を用いてタンパク質を生成することが、魚粉の費用対効果の高い代替となる可能性がある。このことを示した経済分析について報告する論文が、Nature Sustainability に掲載される。

米国各地の埋め立て地、汚水処理場、石油産業やガス産業などから排出され広がったメタンは、全球的気候変動の大きな要因の1つである。メタン資化菌と呼ばれる特定のタイプの細菌は、産業によって排出されたメタンを捉えてタンパク質に変換でき、得られたタンパク質は、栄養価が高く、動物の飼料として使用できる。

今回、Sahar El Abbadiたちは、メタン資化菌を用いて微生物タンパク質(魚の飼料として割合を限定して認可されている材料)を作る際の年間コストを見積もる、技術経済モデルを開発した。Abbadiたちは、このコストをいくつかのカテゴリーに分け、冷却などに使用する電力が主要な投入資本であることを明らかにした。捕捉された廃棄メタンからの魚粉代用品の生産は、コスト競争力があると予想された。言い換えると、現在の技術コストにおいて、魚粉(1メートルトン当たり1600ドル)と同等かより低い価格で、全世界の魚粉市場の14%に相当するメタン由来タンパク質を、米国単独で生産できる可能性があり、冷却費や必要労働量などの生産過程のコストを20%削減すれば、生産高を増やして全世界の魚粉の総需要を満たすことができる可能性がある。

関連するNews & Viewsでは、Richard Cottrellが、かなり多額の先行投資の可能性を考慮する必要性や、このシステムがメタンの削減を超えて環境や社会に及ぼす全体的影響などの未解決の課題を強調している。しかしCottrellは、「Abbadiたちは、産業メタンを使った細菌の生産が、気候変動に取り組みながら、動物飼料(ひいてはヒトの食料)の持続可能な生産を維持するのに役立つことを強く訴えている」と結論付けている。

doi: 10.1038/s41893-021-00796-2

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度