注目の論文

環境科学:ブルーフードの可能性を深く掘り下げて調べる

Nature

2021年9月16日

Environmental sciences: A deep dive into the potential of blue foods

ブルーフード(淡水環境や海洋環境に由来する植物、動物、藻類など)の生産量を増やすことには、ブルーフードの消費を増やし、食事を改善できる可能性が秘められていることを示唆する論文が、Natureに掲載される。全ての評価対象栄養素(オメガ3脂肪酸、ビタミンA、ビタミンB12、カルシウム、ヨウ素、鉄、亜鉛)を平均した場合に、数種類の水生生物性食品の栄養価が、牛肉、羊肉、ヤギ肉、鶏肉、豚肉よりも高いことが判明した。この論文は、Blue Foodコレクションに含まれている。このコレクションには、Nature、Nature Food、Nature Communications に掲載される研究論文、Comment、Opinionが集められており、将来のフードシステムに対する水生生物性食品の貢献可能性と、この貢献を実現するために取り組む必要がある課題に関する識見をもたらしている。

水生生物性食品は、人間の栄養と食料生産の持続可能性の両方を向上できる可能性を秘めていると考えられるが、フードシステムの栄養評価と環境評価では十分に取り上げられていないことが多い。国際的な共同イニシアチブであるBlue Food Assessmentは、健康的で持続可能かつ公平なフードシステムの構築に水生生物性食品が果たす役割を探究している。

Natureに掲載されるChristopher Goldenたちの論文には、3753の水生生物性食品分類群(魚類、甲殻類、海藻/藻類を含む)の主要栄養素と微量栄養素の組成プロファイルが登録された世界規模のデータベースが紹介されている。Goldenたちの分析では、陸上の食料源との数値の比較が行われ、栄養豊富な動物性食品の上位7種全てが水生生物性食品であり、外洋性魚類(マグロやニシンなど)、貝類、サケ科魚類(サケやマスなど)が含まれていることが明らかになった。Goldenたちは、2030年までに世界のブルーフードの生産量が約8%増加した場合の影響をモデル化し、これにより価格が26%低下し、最大1億6600万人の微量栄養素の摂取が改善される可能性があると予測している。また、今回作成されたモデルからは、ブルーフードの生産量の伸びが緩やかなものであっても、水生生物性食品によってカルシウム(8%増、評価対象国全体の中央値)、鉄(4%増)、オメガ3脂肪酸のDHAとEPA(186%増)、亜鉛(4%増)、ビタミンB12(13%増)の供給量がそれぞれ増える一方で、ビタミンAの供給量は1%減少するという予測結果が示されている。さらに、Goldenたちの研究は、水生生物性食品の消費量の増加が男性より女性にとって有意に大きな恩恵になっている国の数がそうでない国の3倍に達していることを示唆しており、栄養の平等を達成する道筋の可能性が明らかになっている。

これとは別にNatureに掲載されるJessica Gephartたちの論文には、ブルーフードの生産が環境に与える影響の評価結果が示されている。Gephartたちは、世界の水生生物性食品の生産量のほぼ4分の3を占める23の水生生物性食品群を分析し、温室効果ガス排出量、窒素・リン汚染、淡水・土地の利用に関する標準化された推定結果を明らかにしている。養殖の二枚貝(ハマグリやカキなど)と海藻類のパフォーマンスが最も優れており、採捕される二枚貝よりも排出量が少なかった。これらの知見は、環境パフォーマンスを改善し、データの少ない環境評価を前進させ、持続可能な食事の実現にとって有益な情報を提供する諸々の機会を明確に示している。

doi: 10.1038/s41586-021-03917-1

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