注目の論文

気候変動:海水準上昇の被害を受けるリスクにさらされている集団の評価

Nature Communications

2021年6月30日

Climate change: Assessing populations at risk from sea level rise

世界中で2億6700万人の人々が、海抜2メートル未満の陸地に居住していることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。こうした場所は、海水準上昇の被害を受けるリスクが最も高い。今回の研究では、この人口は増加し続け、2100年に4億1000万人に達する可能性があり、そうした陸地の大半は熱帯地方にあることが示唆されている。

気候変動によって海水準が上昇し、より頻繁に、より強力な暴風雨が発生するようになっており、この2つの要因が、沿岸環境で洪水被害が発生するリスクを増大させている。洪水リスクの予測は、正確な陸地の標高データに依存するが、世界の多くの地域で、このデータが存在しない。

今回、Aljosja Hooijerたちの研究チームは、人工衛星に搭載されたLiDARによる測定(パルスレーザー光を用いて地表からの標高を測定するリモートセンシング法)によって全世界の低地地形をモデル化し、平均海水準から2メートル未満の高さの地域を特定した。その結果、海水準上昇の被害を受けるリスクが最も高い海抜2メートル未満の陸地に居住する人口が、2020年現在で2億6700万人に達していることが明らかになった。Hooijerたちが作製した地図によれば、最もリスクの高い陸地の62%が熱帯地方に集中しており、リスクの高い陸地の面積が世界で最も大きいのはインドネシアだった。Hooijerたちは、海水準が1メートル上昇する場合の予想値を用い、人口増加率を0と仮定した場合、海水準上昇リスクが高い海抜2メートル未満の陸地に居住する人口が、2100年までに4億1000万人に達するという考えを示している。これらの予測では、今後、熱帯地方におけるリスクがさらに高くなり、高いリスクにさらされた人々の72%が熱帯地方に集中し、熱帯アジアだけで59%に達することが明らかになった。

以上の推定値は、不確定要素の内在する予測に基づいているが、Hooijerたちは、長期的な洪水リスク予防のための適応策と空間計画の策定のために、熱帯地域への注目を高めることが緊急に必要なことを今回の研究で明確にしたと主張している。

doi: 10.1038/s41467-021-23810-9

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