文学:高速電波バーストの発生源をたどる
Nature
2020年11月5日
Astronomy: Tracing the origins of fast radio bursts
天の川銀河内で観測された高速電波バーストの発生源が特定されたことを報告する3編の論文が、今週Nature に掲載される。人工衛星に搭載された望遠鏡や地上の望遠鏡による明るい電波パルスの複数の観測記録から、この電波パルスの発生源が、天の川銀河内のマグネター(極めて強い磁場を持つ中性子星)であることが示唆された。同時に掲載されるReviewでは、こうした新知見の意味と高速電波バーストに関する現在の理解が論じられている。
高速電波バーストが最初に発見されたのは2007年のことで、その後、天文学者は新たな観測を次々と積み重ね、数々の学説を探究して、この事象を説明しようとしたが、その根底にある物理機構を十分に解明することは困難だった。また、電波バーストは数ミリ秒しか持続しないため、その位置を特定するのが難しく、高速電波バーストの発生源を特定することも高難度の課題になっている。大部分の学説は、超新星爆発後の巨大な星の高密度の残骸である中性子星が発生源である可能性を示している。
Nature で発表される3つの独立した研究で、高速電波バーストFRB 200428の発生源がマグネターであることが示唆された。2020年4月28日にCHIME(カナダ水素密度マッピング実験)と米国のSTARE2(Survey for Transient Astronomical Radio Emission 2)の両方で、同じ天空の一領域から高速電波バーストが検出された。Paul ScholzとCHIMEコラボレーションによる論文では、FRB 200428の発生源が天の川銀河内の既知のマグネター(SGR 1935+2154)であることが報告されている。同じようにChristopher BochenekとSTARE2チームの論文にもSGR 1935+2154からのX線アウトバーストと同時に起こった高速電波バーストの観測が報告されている。また、Bing Zhangたちの論文で、これと同じ天空領域のモニタリングが、口径500 m球面望遠鏡(FAST)によって行われていたことが報告されている。この中国の望遠鏡でFRB 200428は観測されていないが、短時間のガンマ線バースト(極めて高エネルギーな爆発現象)の記録が残っており、高速電波バーストの根底にある事象に関する手掛かりが得られた。Zhangたちの論文では、短時間のガンマ線バーストに伴う高速電波バーストが稀な現象だと結論付けられている。
Amanda WeltmanとAnthony Waltersによる同時掲載のNews & Viewsでは、今回の3つの研究による発見は、複数の地点からの天空の観測だけでなく、国際的な科学協力の重要性を浮き彫りにしていると記されている。また、Bing ZhangのReviewでは、高速電波バーストの少なくとも一部はマグネターが発生源であり、全ての高速電波バーストの発生源である可能性も最新の研究結果によって示唆されていると結論付けられている。ただし、Zhangは、他の発生源を完全に排除していない。
doi: 10.1038/s41586-020-2863-y
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