惑星科学:火星の南極下にある塩水湖の区画
Nature Astronomy
2020年9月29日
Planetary science: A patchwork of salty lakes below Mars’s south pole
火星の南極の氷床下にさまざまなサイズの液体が複数発見されたことを報告する論文が、Nature Astronomy に掲載される。この知見は、火星の南極下に、塩濃度が高いために液体のままになっている湿潤領域の区画が存在する可能性を示唆している。
氷底湖は、地球では南極大陸に存在することが知られている。これまでの研究では、火星の南極領域下にも類似の氷底湖のようなものがあることが、探査機マーズ・エクスプレスに搭載されたMARSIS(Mars Advanced Radar for Subsurface and Ionosphere Sounding)によって検出されていた。氷底湖の存在は、宇宙生物学と火星における居住可能なニッチの存在に重大な影響を及ぼす可能性がある。しかし、この湖の液体の性質とその組成については議論がある。
今回、Elena Pettinelliたちの研究チームは、地球の南極の氷底湖を検出するために人工衛星で用いられている技術を利用して、火星の氷底湖の周辺250 × 300平方キロメートルの広い領域のMARSISデータを解析した。Pettinelliたちは、これまでに観測されていた湖の液体の性質を確認することができ、また、乾燥した物質でできた地形によって本体から切り離された、水の小区画を複数特定した。
Pettinelliたちは、この氷底湖が塩濃度の非常に高い液体であると示唆しており、これは、火星の南極下では低温環境にもかかわらず、こうした氷底湖が液体のままで存在できる理由を説明する可能性がある。
doi: 10.1038/s41550-020-1200-6
注目の論文
-
10月1日
考古学:岩絵は古代アラビア砂漠で繁栄する人類を描いているNature Communications
-
9月26日
生態学:世界大戦時の沈没残骸が野生生物の生息地となっているCommunications Earth & Environment
-
9月25日
生態学:米国河川における魚類の生物多様性の変化Nature
-
9月25日
地質学:サントリーニ島で最近発生した地震は共通のマグマによって説明できるかもしれないNature
-
9月24日
古生物学:新種の肉食恐竜が白亜紀後期のアルゼンチンを支配していたNature Communications
-
9月24日
気候変動:2100年までに世界的に深刻な水不足が発生するかもしれないNature Communications