注目の論文

環境:路上に排出されたマイクロプラスチックが風に乗って遠隔地に運ばれている

Nature Communications

2020年7月15日

Environment: Microplastic pollution from roads rides the wind

道路交通によって生じるマイクロプラスチックが大気中を輸送される様子を世界規模でモデル化した結果について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究で、マイクロプラスチック粒子が北極を含む遠隔地域に輸送されることが明らかになり、大気中を輸送されて海洋に到達するマイクロプラスチック粒子の総量は、河川によって堆積されるマイクロプラスチック粒子の総量と同程度と推定された。

新しいプラスチック製品の生産量が増加し続けており、廃棄物の回収やリサイクルを回避するプラスチックの量がどんどん増えている。しかし、プラスチックによる汚染の増加が生態系と環境に及ぼす影響と、プラスチックが遠隔地に到達するまでの経路については、ほとんど解明されていない。

今回、Nikolaos Evangeliouたちの研究チームは、道路上のマイクロプラスチック(タイヤの摩耗とブレーキの摩耗によって排出される)の世界規模での定量化と大気輸送経路のシミュレーションを組み合わせて、こうした汚染物質の軌跡を特定した。現在、道路上でのマイクロプラスチックの排出は、マイクロプラスチック汚染の30%を占めており、その大部分は、米国東部、北ヨーロッパなどの人口密集地域と東南アジアの高度に都市化された地域が発生源になっている。今回の研究で、より大きなプラスチック粒子は発生源の近くに堆積していることが判明した。逆に、2.5マイクロメートル以下の小さなマイクロプラスチックは、遠隔地に運ばれている。Evangeliouたちの推定によれば、年間5万2000トンの小さなマイクロプラスチック(ブレーキパッドの摩耗粉)が世界中の海洋に流出し、年間3万トンが遠隔地の雪や氷で覆われた表面に堆積する。Evangeliouたちは、こうした暗色の粒子が、地表アルベド(太陽からの入射光に対する地表からの反射光の比率)を低下させて、雪や氷の融解を早める可能性があるため、この結果は、北極のような敏感な地域にとって懸念事項になると指摘している。

doi: 10.1038/s41467-020-17201-9

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