気候科学:CFCバンクからの排出がオゾン層の回復を遅らせているかもしれない
Nature Communications
2020年3月18日
Climate science: Emissions from CFC banks could delay ozone recovery
すでに廃止されたが今も使用されている特定の用途からのクロロフルオロカーボン(CFC)の排出量は従来の想定を上回っているという見解を示した論文が、Nature Communications に掲載される。CFCの大気中への排出は、南極のオゾンホールの修復を遅らせ、排出量は90億メートルトン(二酸化炭素換算)に達している可能性があるとされる。
大部分の国々は、モントリオール議定書に定められた製造工程におけるCFC使用の全廃に同意した。しかし、冷蔵庫、エアコン、断熱材などのすでに使用されている製品(CFCバンク)からのCFCの排出は続いている。最近になってCFC-11排出量の増加という予想外の事態が判明し、CFCバンクからの排出を定量化して、CFCの生産再開による排出量の規模を正確に評価する必要性が明確になった。
今回、Megan Lickleyたちの研究チームは、新しい統計的枠組みを用いて、CFCバンクの規模とそれに対応するCFC-11、CFC-12、CFC-113の排出量を評価した。その結果、これらの排出量が以前の評価で示されたものをかなり上回っており、CFC-11、CFC-12、CFC-113の現在の推定排出量の大きな部分を占めていることが明らかになった(ただし、2012年以降の生産再開によるCFC-11排出量の増加を除く)。モントリオール議定書のもとで、CFC-113の使用は一部の用途で依然として許されているが、この論文で報告されている排出量は、以前の研究によって推定された排出量を上回っており、CFC-113の供給源について疑問が生じている。Lickleyたちは、現在のCFCバンクから大気中への排出によってオゾンホールの修復が最大6年遅れ、その排出量が90億メートルトン(二酸化炭素換算)に達していると推定している。この新たな知見は、CFCバンクを回収、破壊してCFC排出量を減少させる必要性を明確に示しているという結論をLickleyたちは示している。
doi: 10.1038/s41467-020-15162-7
注目の論文
-
12月16日
気候変動:氷河の消失は21世紀半ばにピークに達すると予測されるNature Climate Change
-
12月12日
海洋生態学:シャチはイルカを追跡してサケを狩るScientific Reports
-
12月11日
考古学:意図的な火起こしの初期の証拠Nature
-
12月10日
考古学:ローマの建築技術に関する明確な証拠Nature Communications
-
12月9日
Nature's 10:2025年の科学に影響を与えた10人Nature
-
12月5日
環境科学:火山活動が中世ヨーロッパにペストをもたらしたかもしれないCommunications Earth & Environment
