【環境科学】米国本土の隣接する州の間での汚染物質の交換
Nature
2020年2月13日
Environmental sciences: Air pollution exchange between neighbouring US states
米国の各州における大気汚染関連死の約半数は、州外での汚染物質の排出に起因すると考えられるという研究結果を報告する論文が、Nature に掲載される。この知見は、2005年から2018年までの米国本土の48州のデータに基づいている。
微粒子状物質やオゾンなどの汚染物質への長期曝露は、早期死亡のリスクを高めることがある。大気汚染の緩和は、主に局地的な大気汚染度と汚染源に重点が置かれてきたが、隣接州などの遠方の発生源での汚染物質の排出による影響もある。
今回、Steven Barrettたちの研究チームは、米国本土の48州の間で起こっている汚染物質の交換を推定し、2005、2011、2018年の電力、産業、民生、道路輸送、海運、鉄道、航空の各部門からの汚染物質の排出が早期死亡に及ぼす影響を評価した。その結果、汚染物質の排出州の州外での排出関連死の割合は、2005年の53%から、2011年に45%、2018年に41%に減少し、2005年、2011年、2018年の他州での排出を原因とする早期死亡は、人口10000人当たりの死者数、絶対数共にニューヨーク州が最も多かった。また、電力部門は、汚染物質の排出の影響における州外への影響の占める割合が最も大きかった。これに対して、電力部門からの排出量の削減により、州外の早期死亡者が、2005年から2018年までに約1万3000人減少したと推定されている。
Barrettたちは、大気汚染度目標を達成するためには各州間の協調的アプローチが必要だという考えを提起している。
doi: 10.1038/s41586-020-1983-8
注目の論文
-
11月13日
気候変動:ムンバイにおける異常降雨に関連した不均衡な死亡率Nature
-
11月7日
考古学:デジタル地図によりローマ帝国の道路網が10万キロメートル増えるScientific Data
-
11月5日
気候:極端な強風がタービンの限界を超えて動かす可能性があるNature Communications
-
11月4日
地球科学:南極氷河の急速な後退Nature Geoscience
-
10月30日
惑星科学:圧力下で水の世界が形成されるかもしれないNature
-
10月30日
気候変動:南極の棚氷が海洋温暖化によって脅威にさらされているNature
