【動物行動学】マウスはどのようにして宇宙生活に適応するのか
Scientific Reports
2019年4月12日
Animal behaviour: How mice adapt to life in space
国際宇宙ステーション(ISS)に設置されたNASAの齧歯類飼育箱内で宇宙飛行したマウスの初めての詳細な行動解析の結果を報告する論文が、今週掲載される。この動物研究は、宇宙の微小重力環境での長期生活がヒトに及ぼすと考えられる影響を解明する上で役立つ可能性がある。
今回、April Roncaたちの研究グループは、マウスの寿命から見れば長期間(17~33日)のミッションにおいて、ISSに乗せた20匹の雌マウス(16週齢と32週齢)と、それに対応する地上の対照マウスの映像を記録した。この研究の目的は、動物がどのようにして宇宙環境に適応するかについて新たな知見を得ることであり、今回の知見は、長期間の宇宙飛行に対するヒトの応答について解明を進める上で必要な動物研究の結果の解釈に影響を及ぼす可能性がある。
宇宙飛行したマウスは、特有の行動(採餌、セルフグルーミング、身を寄せ合う行動、社会的相互作用)が全て観察された。研究終了時、宇宙飛行した全てのマウスは、健康状態が良好で、体重が地上の対照マウスとほぼ同じだった。また、宇宙飛行したマウスは、実験期間を通じて活発で、動き回っており、新しい環境を探索して、飼育箱全体を利用していた。
宇宙飛行したマウスの中で若齢のマウスは、ロケット打ち上げから7~10日以内に特有の回転行動、すなわちrace-tracking行動(飼育箱の壁伝いに歩く行動)を開始し、これはその後間もなく協調的な集団活動へと変化した。こうした行動の原因としては、この運動に報酬効果があること、ストレス応答であること、微小重力環境では外部から刺激を受けることがない耳の平衡系が興奮することなどが考えられる。ただし、Roncaたちは、この行動をとる理由を解明するためにはさらなる研究が必要だと結論付けている。
doi: 10.1038/s41598-019-40789-y
注目の論文
-
9月9日
気候変動:気温の上昇が添加糖の消費量の増加と関連しているNature Climate Change
-
9月9日
生態学:海洋の温暖化によって脅かされる重要な酸素生産性海洋微生物Nature Microbiology
-
9月4日
気候:地球の炭素貯蔵能力における世界的な限界の確立Nature
-
9月3日
環境:アマゾンの気候変容の鍵となる森林伐採Nature Communications
-
9月3日
気候変動:歴史的データが示す中国における雹嵐発生日数の増加Nature Communications
-
8月28日
環境科学:コンゴ民主共和国を侵食する都市部のガリーNature