注目の論文

【気候科学】管理された二酸化炭素貯留層によって気候変動を緩和できるかもしれない

Nature Communications

2018年6月13日

Climate sciences: Regulated CO<sub>2</sub> storage sites may deliver on climate mitigation

二酸化炭素を回収し、地質学的に貯留することが気候変動の有効な緩和策になる可能性について報告する論文が、今週掲載される。今回のモデル研究では、適切な管理が行われれば、50%の確率で、地中に圧入された二酸化炭素の98%を1万年以上貯留できるが、適切な管理が実施されないと、地中に圧入された二酸化炭素の78%しか貯留できないことが明らかになった。

二酸化炭素の回収・貯留技術は、工業プロセスにおける化石燃料の使用によって発生する二酸化炭素を地中に圧入するというものだが、世界の二酸化炭素排出量を削減し、パリ協定の目標達成に役立つ可能性がある一方で、圧入された二酸化炭素が将来的に大気中に漏れ出す可能性に対して懸念が生じている。

今回、Juan Alcaldeたちの研究グループは、「Storage Security Calculator」という数値プログラムを開発して、二酸化炭素の地層学的貯留が気候変動の緩和にどれほど有効なのかを評価した。この計算ソフトは、2020~2050年に地中に圧入される二酸化炭素の貯留性と、1万年間に大気中に漏れ出す二酸化炭素の総量を定量する。Alcaldeたちは、この計算を2つのシナリオについて行った。第1のシナリオは、二酸化炭素が圧入された貯留層の密度がそれほど高くなく、貯留層の管理が現在の最良の実務慣行に基づいて行われる場合、第2のシナリオは、貯留層の管理が十分でない場合だ。

Alcaldeたちは、貯留層の管理が適切に行われれば、年間漏出率が0.01%より低くなることを明らかにした。年間漏出率0.01%という値は、多くの人々が、気候変動の緩和に有効と考える許容限度だ。適切に管理された貯留層では、最初の100年間の漏出率は0.01%を超えるが、1000年後には許容範囲内に低下すると考えられる。

ただし、Alcaldeたちは、数千年の時間スケールにわたる地中での二酸化炭素の挙動についての理解が不十分であることが、今回の研究で示されたモデルにおける重大な不確定要素であり、そのために二酸化炭素の貯留が過大評価される恐れがある点に警鐘を鳴らしている。

doi: 10.1038/s41467-018-04423-1

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度