注目の論文
【気候科学】全世界で熱帯低気圧の移動速度が低下している
Nature
2018年6月7日
Climate science: Slowdown of tropical cyclones worldwide
熱帯低気圧が地球上を移動する速度が、過去70年間に約10%低下したという新知見を明らかにした論文が今週掲載される。この論文では、特定の陸域上を熱帯低気圧が移動する速度が有意に低下し、その結果、暴風雨に関連した破壊の可能性が増大することも報告されている。
地球温暖化によって最強クラスの熱帯低気圧の強度が高まることが予測されているが、これ以外にもさらに深刻な影響をもたらす可能性のある事象(例えば、夏季の熱帯大気循環の全般的な弱化)が生じる恐れがある。人為起源の温暖化は、大気循環を変化させたことに加え、大気の水蒸気容量を増やし、これによって降水量が増えると予測されている。また、熱帯低気圧の中心部付近の降雨強度は、全球気温の上昇に伴って増加すると予想されている。
今回、James Kossinは、熱帯低気圧の記録を評価して、1949年から2016年までに移動速度が全球的に約10%低下し、一部の陸域で極端な速度低下があったことを明らかにした。北太平洋西部の熱帯低気圧と北大西洋の熱帯低気圧の影響を受ける陸域で移動速度がそれぞれ30%および20%と有意に低下し、またオーストラリア地域の上空でも19%という有意な速度低下があった。Kossinは、熱帯低気圧が、暴風雨の強度の変化と無関係に、特定の地域での滞留時間が長くなり、異常降雨と暴風雨による被害を増加させる可能性があるという結論を示している。
doi: 10.1038/s41586-018-0158-3
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