【生態学】バルト海に侵入したミナトオウギガニによる生態系のレジームシフト
Scientific Reports
2018年4月13日
Ecology: Invasive mud crab causes ecosystem regime shift in Baltic Sea
バルト海にミナトオウギガニ(Rhitropanopeus harrisii)という侵入種が到来したことで、食物網内の資源の支配が急激に変化し、そのまま続いていることを報告する論文が今週掲載される。この新知見は、種の個体数が、その生息環境における栄養素、食物、空間の利用可能性ではなく、捕食によって調節されるようになったことを示唆している。
今回、Jonne Kottaたちの研究グループは、ミナトオウギガニを対象とした個体数調査を監視した長期データと野外実験を組み合わせることで、ミナトオウギガニの侵入の影響を記録した。Kottaたちは、ミナトオウギガニが2011年に到来し、その個体数がその後の2年間で急増した一方で、底生の(海底に生息する)無脊椎生物のバイオマスと種数が、それぞれ61%と35%減少したことを明らかにした。また、ミナトオウギガニの生息域では、優占種の二枚貝類の個体数が減少し、ミナトオウギガニの主な食餌であるハマグリ、ザルガイ、巻貝類、紐形動物が消滅したことも判明した。さらに、二枚貝のカワホトトギスガイ(Dreissena polymorpha)とケヤリムシ科の海生環形動物Laonome sp.という侵入種2種のバイオマスが増加し、海水の栄養素含量も増加していた。
Kottaたちは、カワホトトギスガイの殻が在来種の二枚貝よりもかなり硬く、ミナトオウギガニが容易に捕食できないことを指摘している。そのため、ミナトオウギガニが在来種の二枚貝を捕食する可能性が高くなり、通常は在来種の二枚貝によって消費される植物プランクトンのバイオマスが間接的に増加した。このことが、カワホトトギスガイとLaonome sp.の個体数増加の基盤になっているとKottaたちは考えている。
doi: 10.1038/s41598-018-23282-w
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