注目の論文
【気候】南極半島が温暖化していないのは自然変動の範囲内
Nature
2016年7月21日
Climate: Absence of Antarctic Peninsula warming is within natural variability
南極大陸は、20世紀のかなりの期間にわたって温暖化したが、1990年代後半以降は温暖化傾向が寒冷化に転じたという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、地域的な大気循環の自然変動の範囲内にあり、南極やその他の地域で寒冷化がもっと広範に起こっていることを暗示していない。
南極大陸の複数の観測基地では、1950年代以降に地表付近の気温の上昇が記録されており、この温暖化の原因として、いくつかの関連し合う過程(海氷消失、偏西風、成層圏オゾン層の減少)が挙がっていた。
今回、John Turnerたちは、南極大陸北部の6か所の観測基地のスタックされた気温記録を用いて、同地域の1979年以降の広範なスケールでの気温の変化を調べた。その結果、1990年代後半から2014年までの間は地域的温暖化がなく、年平均気温が統計的に有意な率で減少したことが判明した。そして、最も急速な寒冷化は、南半球の夏に起こったことをTurnerたちは指摘している。Turnerたちは、この寒冷化傾向の原因が、中緯度ジェット気流が強くなったことに伴ってウェッデル海北部で低気圧の活動が活発化して東から南東の冷たい風の頻度が高まったことだと考えている。
Turnerたちは、今回の研究で得られた知見は、南極大陸のわずか1%に対応するものであり、この地域での10年間の気温変化は、全球的な気温の変化の駆動要因とは主に関連しておらず、むしろこの地域の大気循環の極端な自然内部変動を反映していることを強調している。
doi: 10.1038/nature18645
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