【気候科学】大きな被害をもたらすサイクロンが沿岸地帯の海水温低下によって弱体化する
Nature Communications
2016年3月9日
Climate science: Cool coasts calm costly cyclones
ハリケーンの前方にある沿岸地帯の表層水の温度が低下するとハリケーンの強度が低下するという見解を示す論文が、今週掲載される。この論文は、ハリケーンと沿岸部海洋のフィードバックを考慮に入れることによってハリケーンの強度予報の精度が高まることを明らかにしている。
近年、人工衛星による追跡観測と大気海洋結合モデルを組み合わせることによって、ハリケーンの進路予想が大きく改善されたが、ハリケーンの強度を正確に予想することには問題が残っている。例えば、2011年のハリケーン「アイリーン」の場合には、最大風速の予報が常に過大評価となり、リスク評価が不正確なものとなり、不必要な対策費用が発生した。
今回、Scott Glennたちは、MARACOOS海洋観測ネットワークから生成されたデータを用いて、大気モデルシミュレーションを直接強制し、その際に、ハリケーンの強度に影響するフィードバック機構を新たに同定した。Glennたちは、ハリケーンの前方にある強風帯が沿岸域の海洋の乱流混合を引き起こし、深海部にある低温の海水を浅瀬に引き上げることを明らかにした。この機構では、高温の表層水が著しく冷却され、強力な熱流束が大気中に放出され、ハリケーンが弱体化する。
また、Glennたちは、さらに分析を進めて、ハリケーン「アイリーン」の場合に、いわゆる「ハリケーンの目より前方の沿岸部海洋の冷却化」が起こっており、これが、過去30年間に(マサチューセッツ州からノースカロライナ州までの)北米東海岸を横切る北東向きの進路をたどった11例のハリケーン全ての特徴でもあったことを明らかにした。
doi: 10.1038/ncomms10887
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