酸性化がカラフトマスに及ぼす影響
Nature Climate Change
2015年6月30日
Salmon face an acid test
カラフトマスは、気候変動と関連した淡水の生息環境の酸性化の影響を将来的に受ける危険性のあることが明らかになった。この結論を示した論文が、今週のオンライン版に掲載される。CO2濃度の上昇によって起こる海洋の酸性化は、海洋生物種に負の影響を及ぼし、今後数十年間に海水生態系の広範な変化を引き起こすことが予想されている。しかし、酸性化が淡水生態系に及ぼす影響可能性はそれほど注目されてこなかった。
サケは淡水で生まれるが、稚魚期と成魚期の大部分を海水域で過ごし、その後は生まれ故郷の河川に戻って産卵する。カラフトマスは北太平洋で最も多いサケ種で、沿岸生態系の生産力と機能に寄与している。また、サケ種は、北太平洋の先住民コミュニティーを支えており、文化的に非常に重要な意味合いを有している。
今回、Michelle Ou、Colin Braunerたちは、カラフトマスの胚と稚魚をCO2濃度の現在値と将来予測値において10週間にわたって育ててから海水に移した。高濃度のCO2にさらされた孵化したてのカラフトマスとカラフトマスの稚魚の場合、淡水での成長期と海水への移動後のいずれの段階においても発育障害と代謝の変化が見られた。また、これらのカラフトマスは、警報合図を含む水中と目新しい物体の近くで過ごした時間が有意に多く、このことは、高濃度のCO2がカラフトマスの稚魚の不安を軽減する可能性を示唆している。この点と小さな体が相まって、カラフトマスの稚魚は捕食されやすくなっている可能性がある。
淡水中のCO2濃度が上昇すると、個体群として対応できない限り、若いカラフトマスの下流への移動能力だけでなく、海洋でのライフステージの最初の段階における生存率にも悪影響が及ぶ可能性のあることが、今回の研究結果によって示唆されている。
なお、同時に掲載されるNews & Views論文で、Philip Mundayは「[従って]カラフトマスの稚魚の成長と生存がCO2濃度上昇の影響を受けると、生態、経済、社会に影響が広く及ぶ可能性がある」と述べている。
doi: 10.1038/nclimate2694
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