加齢:慢性炎症はすべての集団において加齢と関連するとは限らない
Nature Aging
2025年7月1日
Ageing: Chronic inflammation not associated with ageing in all populations
工業化が進んでいない生活を送る人間集団は、加齢と関連する慢性的かつ軽度の炎症が生じる炎症老化(inflammaging)を経験しないかもしれないことを報告する論文が、Nature Aging に掲載される。この結果は、イタリアとシンガポールの工業化が進んだ2つの集団と、ボリビアのアマゾン地域(Bolivian Amazon)とマレーシア半島(Peninsular Malaysia)に居住する工業化が進んでいない先住民集団の2つのデータに基づいている。
短期的な炎症は、感染症の治癒に不可欠であるが、長期的な炎症への曝露(炎症老化)は、生物学的老化と年齢関連疾患の発症リスクを高めることが知られている。しかし、炎症老化の効果がすべての集団で一貫しているかどうかは不明である。
Maximilien Franckら(シャーブルック大学〔カナダ〕)は、イタリアとシンガポールの2つの工業化コホート研究から得られた19種類のサイトカイン(炎症に関与する小さなタンパク質)のデータセットと、ボリビアのアマゾン地域とマレーシア半島部の先住民集団であるチマネ(Tsimane)族とオラン・アスリ(Orang Asli)族の2つの非工業化コホートから得られたデータを分析した。工業化コホートでは、年齢とともに炎症の増加を示す一貫したパターンが観察され、これは脳卒中、心血管疾患、およびがんなどの慢性的な加齢関連疾患との関連性が見られた。しかし、非工業化コホートでは、Franckと共同著者らは、年齢に伴う炎症の増加を検出できなかった。これらのコホートでは、慢性的な加齢関連疾患も最小限であり、炎症老化と関連していなかった。
これらの結果は、老化プロセスを研究する際には、文化的、環境的、および生活習慣的な要因を考慮することが重要であることを明らかにし、炎症老化に関する既存のパラダイムに疑問を投げかけている。今後の研究では、特定の環境条件が炎症老化とその健康への影響をどのように調節するかを調査することで、異なるグローバルな人口集団における年齢関連疾患の予防に向けたより標的を絞ったアプローチが開発につながることが期待される。
- Letter
- Published: 30 June 2025
Franck, M., Tanner, K.T., Tennyson, R.L. et al. Nonuniversality of inflammaging across human populations. Nat Aging (2025). https://doi.org/10.1038/s43587-025-00888-0
doi: 10.1038/s43587-025-00888-0
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