注目の論文

健康:インターネット配信型認知行動療法の費用対効果の評価

Nature Mental Health

2023年9月1日

Health: Assessing the cost-effectiveness of internet-delivered CBT

インターネット配信型の認知行動療法(CBT)は標準治療に比べて費用対効果が高く、臨床有効性は同程度であることを報告する論文がNature Mental Healthに掲載される。この知見は、英国の国民医療サービス(NHS)利用者の大規模なサンプルに基づくもので、インターネット配信型CBTは、従来型の医療サービスに比べ、待ち時間や治療時間が短いことも明らかになった。

うつや不安といった広くみられる精神的な不調すなわちメンタルヘルス障害は、精神的苦痛の原因となり、社会的機能や職業的機能に悪影響を及ぼす。メンタルヘルス障害を経験した人は、プライマリーケアや二次医療を利用する可能性が高いが、それに伴うコストは障害の種類や重症度によってさまざまに異なる。メンタルヘルス障害の治療の経済面を評価する研究の大半は、全般性不安症と大うつ病に的を絞って行われているが、こういった障害のさまざまな治療法の費用対効果についてはほとんど理解されていない。

Ana Catarinoらは今回、うつや不安と一次診断された患者2万7540人から得たデータを解析し、うつと全般性不安障害の治療のさまざまな選択肢について、主要なコストドライバーの評価を行って、障害の重症度の違いに関連するさまざまなコストを組み込んだメンタルヘルスの経済モデルを作成した。すると主要なコストドライバーは、治療の有効性、専門医への紹介から治療終了までの期間、治療に関連するコストであることが分かった。インターネット配信型CBTは患者が早く治療を受けられ、従来型の治療よりも短い治療期間(従来の約半分)で同等な回復レベルに達した。著者らは、不安よりもうつの場合の方がコスト削減幅が大きく、また、重症度の高い場合の方が付随してかかるコストが大きいために削減効果が高いと述べている。

これらの知見はメンタルヘルスサービスや治療へのアクセスについての政策立案の参考になる可能性があると著者らは考えている。ただし、これらは英国のデータだけに基づいた知見であり、さまざまな医療サービスの費用対効果をもっと深く理解するには、さらに研究を重ねる必要があるとも述べている。

doi: 10.1038/s44220-023-00106-z

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