注目の論文

加齢:高齢マウスにおいてブドウ種子抽出物が示す抗老化作用

Nature Metabolism

2021年12月7日

Ageing: Anti-ageing effect of grape seed extract in old mice

ブドウ種子中の天然化合物(フラボノイドの一種であるプロシアニジンC1)が、老化を促進する細胞の作用を妨げることによって、高齢マウスの健康を改善し、寿命を延ばすことを明らかにした論文が、Nature Metabolism に掲載される。ただし、この生物学的作用の詳しい機構を解明し、ヒトにも何らかの効果があるかを確かめるには、さらなる研究が必要だろう。

化学物質や放射線への曝露があったときや年齢を重ねるにつれ、細胞が老化し、正常な機能が変化したり失われたりする可能性がある。老化細胞が次第に蓄積することが、加齢に伴う身体機能の低下や複数の加齢性疾患の要因になると考えられている。

今回、Yu Sunたちは、培養ヒト前立腺細胞を含むモデルを用いて多数の天然抽出物のスクリーニングを行って、ブドウ種子抽出物とその主要成分の1つであるプロシアニジンC1(PCC1)が、正常細胞には影響を及ぼさないが、老化細胞を選択的に死滅させるのに効果的であることを明らかにした。放射線曝露後に生じるような、老化細胞が病気を引き起こす要因になるいくつかのマウスモデルで調べたところ、PCC1の投与によって老化細胞数が減少し、健康状態の改善につながった。また、PCC1は、免疫不全状態マウスの化学療法の予後も改善した。さらに、高齢マウス91匹(雄48匹、雌43匹。24~27か月齢で、ヒトの75~90歳に相当する)に隔週でPCC1を投与したところ、余命が60%以上長くなって、寿命は約9%延びた。

Sunたちは、PCC1の分子レベルの詳しい作用機構をさらに解明する必要があると述べている。マウスの前臨床試験ではPCC1投与は耐容性良好のようだが、安全な投与量の確定やこれらの知見がヒトにも応用可能かの検証には、さらに研究する必要がある。

doi: 10.1038/s42255-021-00491-8

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度