注目の論文

老化:加齢性疾患や免疫低下のリスクを予測できる炎症性老化「時計」

Nature Aging

2021年7月13日

Aging: Inflammatory aging ‘clock’ can predict risk of age-related diseases and immune decline

心血管疾患やその他の疾患を発症するリスクが高い人を特定できる新しい老化時計について報告する論文が、Nature Aging に掲載される。この老化時計は、全身の慢性炎症を引き起こす血液に基づいたシグナルを用いており、早期診断と介入にとって重要な意味を持っている可能性がある。

免疫系と多くの加齢性疾患との相互作用の特徴は十分に解明されているが、加齢性疾患を発症するリスクが非常に高い人を予測するために使用できる免疫指標は、極めて少ない。

今回、David Furmanたちは、「1000イミュノーム」プロジェクトの一環として、1001人の被験者(8~96歳、女性66%)の血液検体を調べた。このプロジェクトは、慢性全身性炎症の特徴が、加齢に伴ってどのように変化するかを調べることを目的としている。Furmanたちは次に、人工知能を用いて、新しい免疫指標として、iAgeという炎症性老化「時計」を開発した。この時計は、血液中の特定の免疫細胞とタンパク質のレベルが加齢とともに変動するという考え方に基づいている。ただし、この変動が若年期に起こる人もおり、その人のiAgeは、それに応じて定義される。Furmanたちは、iAgeが進んでいる人ほど、こうした加齢性全身性炎症のパターンが早期に現れ、免疫低下や心血管疾患などの複数の長期的疾患を発症したり、若年期にフレイルになったりする可能性が高くなることを見いだした。さらに、加齢に伴って放出されるケモカインCXCL9が、iAgeの時計を早める内皮によって産生される重要な因子であることが突き止められた。CXCL9は通常、免疫系のT細胞の活性化を助けるタンパク質であるが、細胞老化(細胞が機能不全状態になる過程)を促進し、血管機能を阻害して、iAgeを早める。

Furmanたちは、iAge時計が、加齢性疾患と免疫低下を発症するリスクのある人を特定する新しい方法になると結論付け、CXCL9などのiAgeタンパク質がこれらの疾患の新たな治療標的候補になると考えている。

doi: 10.1038/s43587-021-00082-y

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