注目の論文

【ゲノム編集】CRISPRの特異性を高めてDNAの2本鎖切断を避ける

Nature

2019年6月13日

Genome editing: Enhancing CRISPR specificity to avoid breaks

ゲノムへのDNA挿入を正確に行うための完全にプログラム可能なCRISPR-Casゲノム編集システムについて説明する論文が、今週掲載される。この手法によって、標的DNAの2本鎖切断を避け、遺伝コードの予期せぬ改変の発生を防止することができる。

従来のCRISPR-Casゲノム編集システムは細菌タンパク質が用いられ、このタンパク質は、ガイドRNAによって改変したい部位のゲノム配列に誘導される。CRISPR-Casシステムは、DNAの2本鎖切断を引き起こし、これによって新しい遺伝情報の挿入が可能となる。ただし、この2本鎖切断の修復に必要なシステムは、誤りを起こしやすくなることがある。

今回、Sam Sternbergたちの研究グループは、コレラ菌(Vibrio cholerae)のCRISPR-Casシステムが、2本鎖切断を起こさずにDNAの挿入を成功させる上で役立つことを示した。今回の研究では、Tn7様トランスポゾンがコードするタンパク質が、ガイドRNAとCRISPR Cascade複合体を用いたトランスポゾン配列の大腸菌(Escherichia coli)ゲノムへの直接組み込みの仲介を助けることが見いだされた。このCRISPRシステムが、トランスポゾンがゲノム全体に広がる(ゲノム中のある場所から別の場所へと「ジャンプする」)過程の促進に関与していることから、転位(染色体上の遺伝子の移動)の過程に関する新たな知見がもたらされた。さらに、このシステムは、CRISPRゲノム編集の特異性を向上させるためのもう1つの経路となり、遺伝子治療や作物工学に使用できる可能性がある。

doi: 10.1038/s41586-019-1323-z

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