感染症:ボウフラ駆除剤の作用機構を解明する
Nature
2016年9月29日
Infectious disease: Uncovering the mechanisms of a mosquito larvicide
自然界に存在する殺虫剤でカの駆除にとって重要なBinABという細菌毒素の構造が明らかになったことを報告する論文が掲載される。BinABの構造は、ボウフラ駆除機能を解明するための手がかりとなり、今回の研究は、BinABを用いたボウフラ駆除剤の作用強度と作用範囲の拡大に役立つと考えられている。
カは、今もヒトの健康に最も大きな害を及ぼす昆虫であり、マラリア、デング熱、そして最近になって流行しているジカウイルス感染症などの疾患の流行を拡大させている。現在、さまざまな方法を用いてカの駆除が行われており、自然界に存在するタンパク質結晶の形でボウフラ駆除剤を配布するという方法もある。そうしたタンパク質の1つがBinABで、Lysinibacillus sphaericusという細菌によって産生される。BinABは、ボウフラにとって有毒だが、ヒトやその他の動物には無害で、米国、タイ、ドイツと中国でカの個体数を抑制するためにすでに用いられている。しかし、BinABの結晶は非常に小さく、その構造を解明することが難題であるため、BinAB毒素とその作用機序の解明は進んでいない。
今回、Jacques-Philippe Colletierたちは、最近開発された(強力なレーザー源である)X線自由電子レーザー源を用いた連続フェムト秒結晶構造解析という技術を用いて、BinABの構造を解明した。その結果、BinABのボウフラ駆除機能に寄与すると考えられるpH感受性スイッチや糖質と結合するモジュールだけでなく、BinABの作用強度を維持する分子間相互作用が判明した。また、この方法は、結晶が非常に小さいため構造解析に制約があった抗マラリアタンパク質や殺虫性タンパク質に適用できる可能性のあることも今回の研究で示唆されている。
doi: 10.1038/nature19825
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