【神経科学】脚が麻痺したサルが歩けるようになるデバイス
Nature
2016年11月10日
Neuroscience: Paralysed monkeys walk this way
脊髄損傷によってサルの脚が麻痺し、それから最短6日後に新しいデバイスによって脚の自発運動が回復したことを報告する論文が、今週掲載される。このデバイスは、体内埋込型ワイヤレス脳・脊髄インターフェースで、人体を使った研究での使用が承認された部品が使われているため、対麻痺患者に用いる場合の有効性を検証する臨床試験に向けた一歩前進といえる。
これまでの研究では、運動の計画と実行に関与する脳領域から解読された信号を使って、ロボットの手、義手や患者自身の麻痺した手の動きを制御できることが明らかになっている。これに対して、歩行に関係する複雑な脚の筋肉の活性化パターンと協調を回復させるためにこの方法を使えるかどうかを調べる研究は行われていなかった。
今回、Gregoire Courtineの研究チームは、脚の動きを制御する運動野の一部からの信号を解読して、脚部の筋肉の屈曲と伸展を調節する下部脊髄の「ホットスポット」に移植された電極を刺激する脳・脊髄インターフェースを開発した。Courtineたちは、脊髄の部分損傷によって片方の脚が麻痺したアカゲザル2匹を使って、このインターフェースを検証した。そのうちの1匹のアカゲザルは、損傷後第1週に訓練なしにトレッドミルと地面の上で麻痺した脚をある程度使えるようになった。もう1匹は、同じ段階までの回復に2週間を要した。
同時掲載のAndrew Jackson のNews & Views記事には、他の神経インターフェースのサルからヒトへの橋渡しが近年になって急速に進んだため、「脳と脊髄のインターフェースの臨床的実証が2010年代の終わりまでに成功する可能性があるという推測が不合理なことでなくなっている」という見解が示されている。
doi: 10.1038/nature20118
注目の論文
-
11月28日
科学コミュニティー:障害のある博士号取得者は米国の学術界で低賃金であり過小評価されているNature Human Behaviour
-
11月22日
公衆衛生:一般用医薬品の売り上げデータを利用した疾病サーベイランスNature Communications
-
11月15日
生物科学:胎盤の炎症は特定の成人期疾患に関連しているかもしれないNature Communications
-
11月13日
公衆衛生:スクリーンに向かう時間は若者の教育や健康上の転帰に見られるわずかな差と関連するNature Human Behaviour
-
11月9日
医学:構造的に修飾された抗真菌薬はマウスに対する毒性が低下したNature
-
11月1日
化学:化学者の直観を機械学習したモデルによる創薬支援Nature Communications