注目の論文
喫煙に関連した調節性RNAは肺気腫を促進する
Nature Immunology
2015年10月6日
Smoke-associated regulatory RNA promotes emphysema
喫煙に反応して発現される調節性RNA分子を、肺気腫の重要な調節因子の1つと同定したとの報告が寄せられている。miR-22という調節性RNAの発現が喫煙によって誘発されると炎症メディエーターの発現が引き起こされ、肺気腫につながることが明らかになった。
肺気腫は肺の慢性炎症性疾患で、肺がんになる恐れが非常に大きい臨床状態である。喫煙に関連する肺気腫は、T細胞が関与しているが、分子レベルでの作用機序は解明されていない。
David Corry、Farrah Kheradmandたちは、喫煙者の肺では非喫煙者に比べてmiR-22の発現量が多く、タバコの煙やカーボンブラックのナノ粒子(煤煙を模倣)に曝露したマウスでも、miR-22の発現量が増加することを発見した。肺の免疫細胞では、喫煙に反応してmiR-22が特定の酵素(HDAC4)の発現を阻害することが分かった。この酵素は、T細胞や他の炎症細胞を肺へと誘導するメディエーターの発現を阻害する。これらの細胞の肺での活性化が一因となって、肺気腫に見られる肺の弾性や機能の喪失が進行する。miR-22を発現しない遺伝子改変マウスはタバコの煙やカーボンブラックに曝露しても肺気腫を発症しないことが示され、このRNAと肺気腫の発症の関連を明らかになった。著者たちは、miR-22の選択的阻害が、炎症性疾患のこれからの治療法になるかもしれないと述べている。
doi: 10.1038/ni.3292
注目の論文
-
8月14日
健康科学:都市設計は身体活動に影響を与えるNature
-
8月12日
がん:膵臓がんまたは大腸がんの患者において有望な効果を示すワクチンNature Medicine
-
8月5日
健康:超加工食品の摂取と体重減少の関係を調査するNature Medicine
-
7月31日
がん:呼吸器感染症が乳がんの肺転移を促進するかもしれないNature
-
7月29日
神経科学:免疫系は仮想現実においても潜在的な脅威に備えるNature Neuroscience
-
7月23日
神経科学:COVIDパンデミックが英国の成人の脳の老化を早めることに関連するNature Communications