Nature

Cover Story: ブルームの働き:海洋への鉄肥沃化がもたらす生態学的コストと気候上の便益

Nature 656, 8126 (2026年8月6日)

上昇し続ける大気中の炭素濃度を抑え、気候変動の緩和に役立てるため、さまざまな戦略が提案されている。その1つが、海洋に鉄を散布して肥沃化し、海洋藻類の増殖を促す方法である。藻類は光合成によって炭素を隔離でき、死んで深層水へ運ばれると、その炭素も深海に封じ込められる。しかしこの戦略は、爆発的な藻類ブルーム、酸素の枯渇、隣接海域における栄養塩の枯渇など、深刻な生態学的副作用をもたらし得る。こうした問題の規模や、気候上の便益とのトレードオフについては、よく分かっていない。今週号ではJ Yuたちが、高度なモデルを用いて、10の海域において鉄肥沃化を60年間にわたって実施した場合の影響をシミュレートした結果を報告している。研究者たちは、この手法が炭素移出をもたらし得ることを確認し、炭素除去の効率が最も高い海域が太平洋と南大洋であることを特定した。しかし、赤道太平洋では、局所的なブルームが、他海域における栄養塩の利用可能性を撹乱する可能性があり、遠隔海域の動物プランクトンの生物量を低下させることも明らかになった。これに対し、南大洋では生態学的な悪影響が比較的小さかった。このため著者たちは、南大洋における鉄肥沃化が、生態系の撹乱とCO2隔離の最良の均衡をもたらす可能性があると示唆している。ただし、100年規模の時間スケールでは、炭素の再放出を含む、より広範な全球的影響が生じる可能性も残っている。

今週の目次とハイライト The Nature Top Ten バックナンバー

Nature注目のハイライト

その他のハイライト

Nature 創刊150周年記念特集

Nature ダイジェスト

Nature は次に何をすべきか

2020年4月号

Nature が150周年を迎えたのを機に、その価値観と、Nature を改善する方法について考えることにした私たちは、読者の意見をどうしても聞きたくて、アンケート調査を実施しました。

イベントレポート

日本の科学の未来
― 持続可能な開発目標の達成に向けたビジョン ―

1869年創刊のNature は今年150周年を迎える。これを記念するシンポジウムが東京大学安田講堂で開催され、日本の科学のトップランナーである大隅良典氏、柳沢正史氏や、Nature 編集長のMagdalena Skipperらが集った。日本の科学の未来を各氏はどう見ているか。自らの研究や体験をもとに語り、意見が交換された。

Nature 創刊150周年記念特集

著者インタビュー

柳沢 正史氏

「私」とNature  混沌状態をすっきりさせるような研究が好き

長田 重一氏

長田重一大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授は、アポトーシス(プログラム細胞死)の分子メカニズムの解明など、すばらしい業績を残してきた。いくつもの論文が引用ランキングに並ぶ。その始まりは、1980年に成功したインターフェロンα遺伝子のクローニングだった。

柳沢 正史氏

「私」とNature  “ねむけ”の謎を解明したい

柳沢 正史氏

筑波大学大学院時代に見つけた血管収縮物質が世界の研究者の注目を集め、米国テキサス大学にスカウトされて1991年に渡米。後を追って留学してきた後輩の櫻井武(現・筑波大学 国際統合睡眠医学科研究機構;IIIS)とともにオレキシンを発見する。この脳内の神経伝達物質が睡眠と覚醒に関係していることから、本格的に睡眠学の研究を開始。現在IIISを主宰して、「ねむけとは何か」の解明を目指している。

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