The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

1

仕事関数をどこまで低くできるか?

Nature 573 2019年9月26日

有機半導体に電子を効率よく注入する能力は、デバイスの性能に欠かせない場合があるが、これには実用上の課題がある。半導体の電子親和力に合わせる必要性から、一般に仕事関数の低い金属電極が必要になるが、そうした電極は周囲条件下での作製が困難で、好ましくない反応性を示す可能性がある。今回C Tangたちは、最初の液体ホスト中では比較的不活性(つまり、「潜在的」)だが、析出後に活性化されて電子注入・抽出特性が優れた固体ポリマー層をもたらす多価イオンを用いた代替戦略を提示している。この方法によって、周囲条件下での取り扱いが容易になる。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1575-7

2

膜で組み立てられたTCR–CD3の高分解能クライオ電子顕微鏡構造

Nature 573 2019年9月26日

T細胞受容体を介して行われるシグナル伝達には、補助受容体であるCD3、およびζ鎖との相互作用が必要である。CD3は、CD3γ鎖とCD3δ鎖各1本とCD3ε鎖2本から構成されている。Z Huangたちは今回、ヒトTCR–CD3複合体の3.7 Åの分解能でのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を報告し、この複合体の8つのサブユニットの化学量論比、組み立てと相互作用機構についての知見に加えて、TCR活性化(トリガリング)についての手掛かりを示している。この構造の解明は、TCR–CD3複合体を標的とする新規な抗がん治療薬や抗自己免疫療法の開発の新たな機会をもたらすと期待される。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1537-0

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-02646-w

3

圧力下の水素

Nature 573 2019年9月26日

超高圧下の水素の挙動からさまざまなエキゾチック相が明らかになると予測されているが、実験的に調べるのは困難である。こうした挙動を確かめ理解するカギは、この領域で固体水素がとる結晶構造に関する情報にある。今回C Jiたちは、X線回折を用いて、固体水素のいくつかの高圧相(および、これらの相の間の転移)に関する直接的な結晶学的情報を得ている。この情報から、この古典系に関する将来の実験的研究や理論的研究の貴重な制約条件が得られるだろう。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1565-9

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-02811-1

4

ペルセアノールの合成

Nature 573 2019年9月26日

(+)-ペルセアノールは、クスノキ科ワニナシ属の樹木Persea indicaから単離されたイソリアノダンジテルペンである。(+)-ペルセアノールはリアノジンとやや似ているが、(+)-ペルセアノールの中心環系は違った合成戦略を必要とする。今回S Reismanたちは、(+)-ペルセアノールを市販の(R)-プレゴンから16段階で全合成したことを報告している。この合成経路には、効率的な環化による四環性コア部の形成が含まれており、他の類似構造のジテルペンにもこの方法を適用できるはずである。著者たちは、今回の方法による他のイソリアノダンの合成を通して、摂食阻害性と殺虫性はもとより、昆虫における選択的活性に重点を置いて研究することを目標としている。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1580-x

5

キンバーライトは深部の孤立したマントル貯蔵庫に由来する

Nature 573 2019年9月26日

地球の地球化学的進化に関する広く受け入れられているパラダイムでは、過去約45億年にわたるマントルからの連続的なメルトの抽出によって大陸地殻が形成され、相補的な貯蔵庫が少なくとも1つ生成されたとされている。現在、この貯蔵庫は、メルトの枯渇した上部マントル内の中央海嶺玄武岩供給源であると認識されている。しかし、地球化学的モデルと、火山岩の一部にある始原的特徴は、より深部の孤立した領域に、比較的分化していない大量のマントルが存在している可能性を示唆している。今回J Woodheadたちは、全球に分布しているキンバーライト(大半のダイヤモンドの供給源である少量の火山岩)の起源は単一の均一な貯蔵庫であり、その同位体組成は、地球史の少なくとも25億年にわたって孤立して進化してきた一様で始原的なマントル供給源を示していることを明らかにしている。その後約2億年前に、おそらくは沈み込みによってもたらされた外部の物質の汚染に起因して、同じ供給源の大部分が劇的に擾乱された。これによって、最近のマントル由来メルトに、汚染されていない始原的マントルが非常に見つかりにくい理由を説明できる可能性がある。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-02808-w

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1574-8

6

明らかになった最初期の鋏角類

Nature 573 2019年9月26日

鋏角類は、節足動物(関節のある付属肢1対を備えた体節を複数持つ動物群)を構成する主要な動物群である。現生の鋏角類にはクモ類、サソリ類、ダニ類、ウミグモ類などが含まれるが、かつてはこの他に、さまざまな絶滅種が数多く存在した。鋏角類の起源については議論が続いている。今回C AriaとJ Caronは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の中期カンブリア紀の有名なバージェス頁岩から得られたMollisonia類の一種について化石を調べ直し、最初期の鋏角類がどのような動物だったかを解き明かしている。新たな化石標本からは、鋏角類を定義付ける特徴的な鉤爪様の鋏角の他、鰓や神経系の構造など、これまでほとんど知られていなかった数々の特徴が明らかになった。総合すると今回の化石は、鋏角類の全般的な定義を改善するものである。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1525-4

7

細胞の生死の運命を決める可変抵抗器としてのDDX3X

Nature 573 2019年9月26日

細胞のストレス応答は、細胞の生死を調節する上で重要な役割を担っている。T Kannegantiたちは今回、RNAヘリカーゼであるDDX3Xがストレス顆粒の形成に重要であり、また、それはNLRP3インフラマソームの形成やピロトーシスによる細胞死への運命拘束にも必要であることを明らかにしている。ストレス条件下において、DDX3Xはストレス顆粒によって隔離され、それによってインフラマソームの活性化や細胞死が制限される。このようにDDX3Xは、細胞のストレス条件下で生死の運命決定に対する可変抵抗器として働いている。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1551-2

8

細胞の代謝が細胞状態の前悪性から悪性への移行を調節する

Nature 573 2019年9月26日

腫瘍抑制因子p53は、膵臓がんで喪失していることが多く、がん細胞の代謝を調節することが知られている。S Loweたちは今回、膵臓の腫瘍形成の初期段階で、p53が代謝を変化させて、重要な代謝物α-ケトグルタル酸(αKG)を増加させることを示している。αKGのレベルが上昇すると、DNAの5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)の増加が引き起こされ、これが遺伝子発現を変化させて、細胞の分化を誘導した。p53の喪失により5hmCが減少すると、前悪性から脱分化した悪性への細胞状態の移行が促進された。αKGの生成に関与する代謝物を調節することで、p53が存在しなくても腫瘍形成を抑制できる。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1577-5

9

B細胞のV(D)J組換え機構

Nature 573 2019年9月26日

B細胞は、V(D)J組換えと呼ばれる過程で、さまざまな遺伝子断片をランダムに結合させて、B細胞受容体や抗体の非常に多様なレパートリーを生み出すことで、ほぼ全ての病原体の認識を可能にしている。RAG(recombination activating gene)1および2は、V(variable)、J(joining)、場合によってはD(diversity)の遺伝子断片の再編成に関与する重要な酵素である。V(D)Jリコンビナーゼは、組換えの特異性を維持するために、V、D、Jの遺伝子断片の両側にある組換えシグナル配列(RSS)を認識して結合する。F Altたちは今回、コヒーシンを介したクロマチンループ突出の進行が、下流側のDH断片RSSとの組換えおよび介在するDNAの切除に有利に働くという直線的クロマチンスキャニングモデルの証拠を示す。この研究は、この分野における長年の疑問を解決し、ゲノム安定性と染色体構造に重要な意味を持つ。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1547-y

10

翻訳開始を単一分子蛍光顕微鏡で観察

Nature 573 2019年9月26日

真核細胞での翻訳開始では、開始コドンの所に機能を備えたリボソームを形成するために、いくつかの補助タンパク質が必要とされる。J Puglisiたちは今回、単一分子蛍光顕微鏡法を用いて、このような開始因子がどのように機能するのかをリアルタイムで測定し、翻訳開始段階のリボソームが伸長を行えるように形を変化させる様子を明らかにしている。中心的な役割を果たすのはeIF5Bで、その結合と解離が速度論的チェックポイントとして働いて、この変化を調節することが分かった。

Letter doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1561-0

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