The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

1

彗星大気中に存在する鉄とニッケル

Nature 593 2021年5月20日

太陽をかすめた数個の彗星を除いて、これまで彗星の大気中には遊離したニッケルや鉄の原子は観測されていない。今回J Manfroidたちは、多数の彗星の高分解能の紫外スペクトルと可視光スペクトルについて報告し、太陽から遠く離れた彗星でも、Fe IとNi Iの輝線がありふれたものであることを見いだしている。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-01265-8

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03435-0

2

彗星2I/ボリソフのコマに見つかった気体状のニッケル原子

Nature 593 2021年5月20日

つい最近まで、気体状のニッケル原子は太陽のごく近傍を通過する彗星のコマ内でしか観測されていなかった。これはおそらく、ニッケルに富む塵粒子が昇華するには、700 Kを超す温度が必要なためと考えられる。今回P GuzikとM Drahusは、2019年に太陽系を横切っているところを発見された、恒星間彗星2I/ボリソフのコマの中に、気体状のニッケル原子を観測したことを報告している。この彗星は、太陽から2.3天文単位の距離にあってその平衡温度が180 Kであることから、今回の観測結果は予想外であった。著者たちは、検出されたニッケルが短寿命のニッケル含有分子に由来していると結論している。さらに、観測結果から、O、NH2、OH、HCN、COの存在度が、炭素に富む太陽系の彗星によく似ていることが明らかになった。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-01265-8

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03485-4

3

極低温化学反応を状態ごとに分解する

Nature 593 2021年5月20日

今回Y Liuたちは、2KRb → K2 + Rb2という化学反応を極低温温度で調べることで、反応動力学について前例のない分解能を達成している。反応物を極低温にすることによってその量子状態を完全に制御できる一方、生成物の状態分解同時検出によって、可能な57通りの回転状態出力それぞれへの散乱の確率が測定可能になり、予測の統計理論の状態ごとの精密な基準が得られた。今回の研究結果は、化学反応動力学の研究のための極低温技術の可能性の、説得力のある実証である。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-01264-9

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03459-6

4

酵素を使ってアミドを作る

Nature 593 2021年5月20日

アミド結合形成は、最もよく用いられる化学反応の1つだが、いまだに古典的なカップリング試薬によって行われている。ペプチドやタンパク質を一から構築する際、脱保護段階とカップリング段階が繰り返され、大量の廃棄物が出る。今回J Micklefieldたちは、細菌植物毒素の合成に関与している、コロナファシン酸リガーゼ(CfaL)という酵素ファミリーが、アミド結合形成を触媒することを報告している。これらの酵素は、保護されていないアミノ酸を含むさまざまな基質に対して寛容な特異性を示し、変異の導入によって性能をさらに向上できることが見いだされた。今回の酵素の合成能は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のプロテアーゼ阻害剤などの医薬品有効成分の合成においてが実証されている。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03447-w

5

体細胞変異の正確な検出のためのNanoSeq

Nature 593 2021年5月20日

現在の体細胞変異の検出法の大半は、有糸分裂を行う細胞タイプに限定されており、そのエラー率は、単一細胞あるいはごく少数の細胞のみで生じる変異を正確に検出できないほど高いことがある。I Martincorenaたちは今回、二本鎖塩基配列解読法のBotSeqSに基づいて、エラー率が体細胞変異率より2桁低い(10億部位当たり5部位未満のエラー)「NanoSeq」を開発している。これによって、クローン性とは独立に、分化細胞の研究が可能になった。著者たちは、このNanoSeqを多数の幹細胞や、最終分化した細胞タイプおよび組織に適用し、これらの生物学的試料の変異の全体像を調べるとともに、変異率にはわずかなばらつきしかなく、それは細胞分裂の割合とは独立していることを明らかにした。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03477-4

6

安価なハンセン病薬がSARS-CoV-2に対する広域スペクトルの抗ウイルス薬となる

Nature 593 2021年5月20日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗ウイルス治療は限られており、レムデシビルは臨床で使われている主要な抗ウイルス薬だが、静脈内投与の必要があり、比較的高価である。今回S Chandaたちは、ハンセン病の治療として臨床ですでに使用されている薬クロファジミンが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)や重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)など、複数のコロナウイルスに対して、細胞株やヒト肺組織において抗ウイルス活性を示すことを報告している。クロファジミンは、SARS-CoV-2に感染したハムスターの治療で、レムデシビルと同等の効果があり、これら2剤を併用することで相乗効果が得られた。重要なことに、クロファジミンはコロナウイルスの複製の複数の段階を標的とする。クロファジミンはヒトへの使用が承認されており、安価で経口投与が可能であることから、COVID-19患者の治療に対して有望かつ実用的な選択肢となる。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03431-4

7

SARS-CoV-2に対するヒト由来のIgG様二重特異性抗体

Nature 593 2021年5月20日

L VaraniとR De Gasparoたちは今回、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する合理的に設計されたヒト由来の二重特異性抗体について報告している。この抗体は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインの重複しない2つのエピトープを標的としていて、懸念される変異株(VOC)も含め、SARS-CoV-2に対して強力かつ広範な有効性を示した。この抗体は、相乗的にACE2への結合を阻害し、肺の炎症を伴う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)致死モデルにおいてマウスを保護し、ウイルスのエスケープを防いだ。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03461-y

8

非ヒト霊長類における塩基編集

Nature 593 2021年5月20日

K Musunuruたちは今回、非ヒト霊長類の肝臓において、in vivoでの脂質ナノ粒子を用いた塩基編集の安全性と有効性の原理証明を提示している。彼らは、肝細胞で、PCSK9を標的とした塩基編集を非常に効率的に行い、それによってコレステロールレベルが低下することを示した。この手法は、in vitroおよびin vivoでのオフターゲット作用が限定的であることを実証するとともに、心血管疾患治療のためのゲノム医学的手法の実現が有望である証拠を示している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03534-y

9

ミトコンドリアの分裂位置が重要

Nature 593 2021年5月20日

ミトコンドリアの分裂は恒常的な過程であり、新しいミトコンドリアの形成や、マイトファジーによる損傷ミトコンドリアの除去につながることがある。今回S Manleyたちは、この2つの運命の決定を区別する仕組みの解明に取り組んだ。彼らは生細胞の高分解能画像化法によって、機能的、機構的に異なる2種類の分裂を観察した。具体的には、ミトコンドリアの分裂位置がこの細胞小器官の辺縁部にある場合、生じた小さい娘ミトコンドリアは、マイトファジーによって除去される。これに対し、中央部での分裂はミトコンドリアの増殖につながる。どちらのタイプの分裂事象にもダイナミン関連タンパク質1(DRP1)が関わるが、分裂のタイプはDRP1を誘導する膜アダプタータンパク質の違いというレベルで区別される。さらに、中央部での分裂にのみ、アクチンと小胞体を介した前収縮が関与する。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-021-01173-x

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03510-6

10

結核菌由来VII型分泌装置の完全な構造

Nature 593 2021年5月20日

ヒトの病原菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、機能が異なるVII型分泌装置(T7SS)を5つ(ESX-1からESX-5)持っていて、これらは毒性因子の細胞からの運び出しと栄養素の細胞内への輸送に使われている。発症にこれらが担う中心的役割を考えれば、T7SSは抗結核薬の開発のための重要な標的である。病原性を持たないスメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)株由来のESX-3の部分構造はすでに解かれているが、ヒトに感染する結核菌の完全な構造はまだ得られていなかった。今回T Marlovitsたちは、ESX-5集合体のクライオ電子顕微鏡法によって得た完全な(無傷の)構造を報告し、この集合体が165本の膜貫通ヘリックスからなり、3つの二量体からなる三量体としてMycP5プロテアーゼにより安定化されていることを明らかにしている。また、この構造によって、分泌経路だけでなく、細胞質ゾル中の高度に動的なドメインが基質認識と選択について果たしていると思われる役割も示唆された。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-021-03517-z

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