Nature ハイライト

Cover Story:性によって生じる較差:タイセイヨウサケで体のサイズを決める単一の遺伝子は、雌と雄それぞれの必要に応じるように調整されている

Nature 528, 7582

フィンランド北部のテノ川を泳ぐ、体の小さなタイセイヨウサケ。
フィンランド北部のテノ川を泳ぐ、体の小さなタイセイヨウサケ。 | 拡大する

Credit: Panu Orell

表紙は、北極光の下、ノルウェーのアルタ川で撮影された雌雄のタイセイヨウサケ(Salmo salar)。同じ夜に同じ位置で同じカメラで撮影した二重露光写真である。今回C Primmerたちはタイセイヨウサケの成熟年齢についてゲノム規模の関連研究を行って、成熟に達する年齢のばらつき、ひいては重要な漁獲対象種の基本的形質の1つである体サイズのばらつきに、単一の遺伝子VGLL3が強い影響を及ぼすことを明らかにした。VGLL3遺伝子座は性依存的優性の一例であり、雄では早めの成熟を、雌では遅めの成熟を促進することが分かった。こうした機構が働くことは、この形質で見られる異性間の利害衝突(性的対立)の問題に対する解決策の1つとなり、雄雌で異なる生殖年齢が選択される傾向が生じる。雌は遅めに成熟することにより大きくなり(5~15 kg)、海で餌を取る期間が長くなる。一方雄は、小さいサイズのうちに(1~3 kg)成熟することにより適応度が高くなると考えられる。タイセイヨウサケの多くの集団で遅めの成熟の頻度の低下が観察されており、今回の発見は、この種の個体群管理の問題に大きな影響を与えるだろう。

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