Nature ハイライト

物理:レーザーの調律

Nature 433, 7028

今週号ではTroccoliたちが新型の固体レーザーを発表している。この素子は、主に赤外スペクトル領域で光の波長を変えられるラマンレーザーと呼ばれる従来型の光源と関係がある。しかし、今回の新しい「ラマン注入レーザー」は既存のラマンレーザーとは基本的に異なる方式で作動する。 これらの光源すべての基礎となるのがラマン効果である。何かの物質に当たった光は、この効果のためにその物質中での共鳴によってエネルギーを失ったり獲得したりし、異なった波長で散乱される。ある光子のラマン散乱によって別の光子の散乱が誘導され、その結果、光シグナルが増幅されてレーザー光が放出される。しかし、既存のラマンレーザーでは、この増幅率(利得)が小さく、素子を別の強力なレーザー源の光で「ポンピング」しなければならなかった。 Troccoliたちは、光学的にではなく電気的にラマンレーザー発振を駆動する方法を発見した。この方法は、オプトエレクトロニクス技術で用いるのにずっと便利である。また、従来型のラマンレーザーに比べてこの素子の利得は非常に大きいため、スイッチを入れる前に強力なレーザー光を入力する必要がない。 今回の工夫は、素子に電流を注入して、半導体材料の薄層が別の層の間に挟まれてできた「量子井戸」の電子エネルギー状態間に共鳴を励起する点である。この方式の利点は、量子井戸層の厚みを制御すればこれらのエネルギー状態を調整できることだ。著者らは、このラマン注入レーザーによって、電力消費量の少ない小型で頑丈な、幅広い赤外波長の光源ができると述べている。

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