Nature ハイライト

エネルギー:自分で暖まる燃料電池

Nature 435, 7043

外部ヒーターを必要とせずにプロパンで駆動される燃料電池が報告されている。この電池は、燃料を消費して自ら発熱し、温度を維持する。デバイスは薄い円盤で、携帯用電子機器で普通に使われるリチウム電池と同じくらいの大きさや形だ。この電池は約0.7Vの電圧と約350mWの電力を生み出し、2つ重ね合わせれば1.5VのMP3プレーヤーを動かすのに十分な電力が得られる。  燃焼のエネルギーを直接電気に変換する燃料電池は、将来の「クリーンな」携帯電力源として最も有望視され、ラップトップ機器から自動車まで広範に利用される可能性がある。炭化水素で駆動される燃料電池では一般にメタンが使われるが、プロパンなどの燃料のほうが重量あたりのエネルギー生成率が高く、また加圧ガスではなく液体として容易に貯蔵できる。しかし、これらの燃料を利用できる燃料電池は熱して高温にしなくてはならず、ヒーターのための別の電力源を必要とするので、携帯機器に組み込むことがむずかしい。  S Haileたちによれば、自己発熱デバイスの鍵を握る触媒は、二酸化セリウムの混ざったルテニウム金属粒子でできた薄い多孔質の膜で、プロパンと酸素の反応を促進する。この反応は、300℃以上の炉の中で燃料電池を加熱することによって一度始まれば、あとは自動的に継続する。炉を止めても反応は続き、500〜600℃で作動するデバイスを維持するのに十分な熱が生成される。Haileたちは、反応開始時に使われる触媒や燃料の種類をかえることで、最初の外部熱源の必要性を完全になくしたいと考えている。また、このプロパンの点火プロセスは通常の炭化水素を燃焼する燃料電池よりも高速である。

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