Nature ハイライト

Cover Story:頑張ればうまくいくかも:ヘテロ接合性の増大はオットセイの気候変動への適応を助けるか?

Nature 511, 7510

ナンキョクオットセイの雌とその生まれて間もない仔。
ナンキョクオットセイの雌とその生まれて間もない仔。 | 拡大する

Credit: Jaume Forcada

表紙は、南大西洋にあるサウスジョージア諸島に属するバード島の氷山の上に居るナンキョクオットセイ(Arctocephalus gazella)である。この動物種は、乱獲によって20世紀初頭までに絶滅の危機に瀕したが、狩りが行われなくなってから個体数が回復し始め、餌の供給量が極めて豊富なことで大群が生存可能となっていた。しかし、オットセイは温度が急速に変化する地域に生息しているため気候変動に対して特に脆弱であり、また世代時間が比較的長いことで進化的適応能力が限られている。今回、サウスジョージア諸島で得られた30年間のデータの分析から、ナンキョクオットセイが再び減少しつつあり、2003~2012年に雌の個体数が約30%減ったことが明らかになった。しかし、こうした過酷な条件は一方で、雌の間で高い遺伝的ヘテロ接合性を選択していた。このこと自体は進化的応答ではないが、環境条件が悪化し続ける中、ヘテロ接合体という利点が遺伝的変動の維持を助け、ナンキョクオットセイが適応によって応答する時間を稼ぐことになるかもしれない。

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