Nature ハイライト

進化:グルジアの歯のない原人

Nature 434, 7034

およそ180万年前の人類社会にも年配者を思いやる行動が芽生えていたことを、1個の原始的な人類の頭骨が伝えているようだ。グルジア共和国のドマニシで見つかったこの頭骨について、Brief CommunicationsでD Lordkipanidzeたちが、そう報告している。  この頭骨はほぼ完全無傷だが、歯が全部抜けている。しかも歯槽骨はすべて、死亡する数年前に吸収されていたようだ。こうした萎縮状態からすると、この頭骨の持ち主は病気か高齢だったとみられ、食べ物を下ごしらえしてやる必要があったのではないかと思われる。共同生活体内に年配者が存在する今回の例は、これまでネアンデルタール人で確認されていた同様の例よりも100万年以上年代をさかのぼるもので、有史以前の人々は過酷な生活ゆえに粗暴で冷酷というハードボイルドな生き方をせざるをえなかったが、年をとって歯が抜けてしまい、無力でつらい時を過ごすこともあったのだろう。 この頭骨は、ドマニシで出土した原人化石の注目すべき標本群に加えられる。ドマニシ原人は、アフリカで200万年ほど前に進化してユーラシア全域に拡散したホモ・エレクトゥスに似ているが、他の場所で見つかったホモ・エレクトゥス標本よりも原始的で、身長も低い。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度